第28回 アフリカ・モロッコはウザかった(1)【嵐よういち・海外裏ロード】
フェズの旧市街。2月は寒かった。二度と行きたくない街の一つ

アフリカ大陸北西部に位置するモロッコの国土は日本の約1.2倍。世界銀行によると、2016年時点の人口は3528万人だ。首都は有名なカサブランカではなく、あまり知られていないラバトである。

一方、フェズはモロッコの文化的中心地で、人口は14年時点で約111万人。観光名所の旧市街は壁で囲まれていて、中世のマリーン朝やバザールがあって活気に満ちあふれている。だが過去に行った人の話では、旧市街はうっとうしいやつや、詐欺師ばかりいて、その連中とトラブルになった旅行者も多いという。

フェズの旧市街。2月は寒かった。二度と行きたくない街の一つ

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ツーリストポリスは観光客を守るため、定期的な取り締まりをしているらしく、そのような連中がまったくいない時期もあるが、いつの間にか浴槽に付くカビのように出現してくるのだ。

俺はウザい連中が大嫌いで、そのようなのが生息する場所には近づきたくなかったのだが、旅程の都合上、仕方がなかったのと、旅行作家として変なやつらの生態を調査する使命もあるので行くことにした。

日本語を操る怪しい自称ガイド

カサブランカからのバスはフェズのバスターミナルに到着。バスから荷物を降ろすと、さっそくうさん臭そうなタクシーの客引きがやって来た。予約してあるホテルの住所を見せると客引きは言う。

「このホテルはここから近くないから、60モロッコ・ディルハム(約700円)だよ」

「高すぎるでしょ。40にしてよ」

俺がそう言うと、客引きの顔が不快な表情に変わる。

「高いと思ったら、そのへんに停まっているタクシーに聞いてみろよ。皆、60じゃないと行かないぞ、勝手にしろ」

そのまま行ってしまったが、おかしい……普通だったらこのような客引きは少し値下げしてくれるはずなのだが。

俺は近くに停まっているタクシー運転手に片っ端から値段を聞いてみたが、60モロッコ・ディルハムだった。翌日分かったのだが、少し歩いて「プチタクシー」を拾うのが正解である。そのタクシーはメーター制で、何回も利用したがかなり健全で安かった。だがこの時はそんなことを知る由もない。

すると先程の客引きと再び目が合ったので、彼に連れられてタクシーに乗り込む。運転手は小柄だが筋肉質な男だった。早く出発してくれと思ったが、客引きがどこかに電話をかけ始めた。

「あなたに電話だ」

客引きが俺に携帯電話を渡してくる。こういうのはロクなことがない。

「は? 誰からだよ?」

「あなたと話したい人だよ」

そんなやつは相手にしたくない。

「そんなことよりも早く出発してよ」

「さあ、早く電話に出てくれ」

こんな一方的なことを言われて頭にきたが、どんなやつが電話口にいるのか気になったので、出てみることにした。

「ハイ、元気? 日本のどこから来たの? 何日いるの?」

日本語だった。インドやインドネシアのバリ島にいる日本語を操るやつらと同じで、こっちからすると警戒心を抱かせるような、ムカつくイントネーションで話してくる。客引きはカモの日本人がやって来たので、日本語を話す自称ガイドに電話をつないだのだ。

国によってはこれが時たま便利で、ありがたいのは事実だが、インドとモロッコでは残念ながらありがたくない。一方的に話してくる男にだんだんと俺はキレてきた。タクシーには高い金を払い、ホテルまで連れて行ってくれる約束のはずだ。俺は電話を外し客引きに渡そうとしたが、やつは受け取らず「とにかく君の役に立つはずだから話してくれ」という。

俺が電話に出ると再び営業トーク。しかもかなりなれなれしい。

「あのさ、俺、あなたの話に興味ないし、もう関わらないでくれ」

と俺は言い、客引きに電話を返した。俺が怒りの表情を示しているせいか、やつは何も言ってこなかった。

「早く出発だ!」

俺は大声でそう伝えると車は発進したが、着いた早々これで、先が思いやられる。(つづく)

宿の近くの売店のオヤジは優しかった

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嵐 よういち
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旅行作家、旅行ジャーナリストをやっています。
代表作は、海外ブラックロード・シリーズ。
海外ブラックロードpodcastをクレイジー・ジャーニーで話題の丸山ゴンザレスと二人で週に1回配信しております。
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