【嵐よういち・海外裏ロード】イスタンブールで詐欺男に遭遇
トルコの大都市イスタンブールは人口1480万人で、世界で唯一、ヨーロッパとアジアにまたがっている街だ。西洋と東洋の文化が交じり合い、3つの帝国の首都となった歴史もあり、独特の雰囲気がある。1453年にはオスマントルコ帝国の首都になり、街の名が『永遠の都』を意味するイスタンブールになった。
イスタンブールは昔からボッタクリ被害や、悪名高い詐欺事件などが多いと聞いていた。俺の友人はバザールと呼ばれる市場でスカーフを選んでいたら店の男に店内に誘われて中から鍵を掛けられて軟禁状態にされ、法外な値段で購入させられたり、別の知り合いはペルシャ絨毯を選んでいたら相場の何十倍で売りつけられた話などロクな話を聞かない。その一方、観光客が集まる場所にいる連中は変な奴ばかりだが、基本的にトルコ人は親日で有名だし、地方に行くと騙してくるようなことはほとんどなく、非常に親切な人が多い。国内は観光地が多彩なので、トルコを訪れて好きになったり、リピーターになった人は数知れない。
イスタンブールにやってきた俺だが、初めてのトルコなのに全然予習もせず、街で流行っている犯罪についてなにも調べていなかった。宿泊先のホテルで友人の内田社長と待ち合わせをしていて、2日間、一緒に街を観光する予定であった。
夜8時半をまわった頃、宿から歩いて5分位の場所にあるレストラン街に向かった。この周辺は世界遺産にも登録されているブルー・モスクやアヤソフィアなどがある歴史地区で、観光客のほとんどが訪れる場所であろう。俺たちは一軒のレストランに腰をおろして酒を飲みまくり、世界三大料理と言われるトルコ料理を堪能した。
2時間は店にいただろうか、俺たちは疲れも手伝ってかなり酔っぱらったので会計を済ました。遅い時間だが観光客や地元の人が大勢歩いている。すると、30歳位の男が内田社長に「ライターを貸してくれないか?」と言ってきた。社長がそれをだして貸すと世間話をしてきた。そして俺たちにタバコを出して勧めてくる。彼はペラペラの英語で話してくる。彼によるとスペインのバルセロナから一人旅で来ていて、宿で退屈だから外に出てきたそうだ。俺は少しスペイン語が話せるので話しかけてみた。普通だったら「君、スペイン語が話せるんだね?」と返してきたり、何か反応があるものだ。だが彼は一瞬キョトンとした顔をして俺の言葉を理解していないような素振りだ。俺は『怪しい』と思った。この時社長も、なんかこの男はオカシイと思っていたらしい。面倒くさそうだし疲れていたのでこの男を振り切ろうとコンビニに入るとその男もついてきた。こっちが若い女の二人組だったらいざ知らず、東洋人のオッサン二人にしつこく来るのは何か企んでいるはずである。店を出ると宿泊しているホテルの場所を聞いてきたり「ここから5分くらいの所にいい飲み屋があるから一緒に行かないか?」「僕は暇なんだよ、一緒に飲もうよ」としつこく誘ってきた。
少し考えていただきたい。この男は、俺と同じホテルでよく顔を合わせて仲良くなったとかではない。街で声をかけてきて飲みに誘ってきているのである。こっちは女性ではなく、東洋人のオッサン二人。ゲイの誘いともちょっと違う。少し考えなくてもオカシイのである。ただ、こっちは海外にいることでテンションが上がっているし、酒をかなり飲んでいる。俺が若くて旅の経験が浅かったらついて行ってしまうかもしれない。現に俺は20代前半の時、ギリシャの首都のアテネで「安い航空券を扱っている旅行会社に勤めているんだけど、君の旅程について聞きたいし、いろいろ話をしたいから少し店に入ろう」と地元の男に誘われ、怪しいと思いつつも実はイイ人かも? とアマイ考えでついて行ったらそこは薄暗いバーで、直ぐに出たらいいのに席に座ってしまい、店の経営者夫婦とそいつは酒を飲みまくり始め、さすがに出ようとしたら「飲み代よこせ!」と脅されて大した金額ではなかったと思うが、奥の部屋にも危ない人がいる気配がし、身の危険を察して金を置いて逃げてきた経験がある。
このようなパターンは平然と断るに限る。俺と社長は「疲れているし、明日も早い。さようなら」と言うと、男はつまらなそうな顔をして行ってしまった。
翌日、気になってイスタンブールの犯罪についてネットでいろいろと調べてみると、どうやら俺たちが経験したことは『流行っている詐欺』のようだ。俺は世界中行ってきて、現地に着く前に、流行りの犯罪の手口などを調べて頭に入れておくが、今回はそれをしていなかった。どうやらネット情報によると、街を歩いていると自称スペイン人旅行者が話しかけてきて、仲良くなる。そして「僕の好きな店がある」と言って巧みに店に連れていく。この店はもちろんグルでボッタくってくる。おそらく分かりにくい場所にあったり、警察沙汰にならない位の金額、例えば2~4万円ぐらい吹っ掛けてくるのだろう。
イスタンブールに行く人は十分に気を付けていただきたい。
世界中の「危険な街」に行ってきました
世界中の危険都市を歩いてきた嵐よういち。本書では、彼がこれまでに訪れた都市の中でも「非常に危険な街」を取り上げ、「世界一危険な街はどこなのか?」を検証していく。
時には強盗に襲われ、時にはスリの被害に遭い、時にはスラム街に決死の潜入をし、日本にいては想像することもできない世界の現実に踏み込んでいく。
シリーズ累計80万部以上の危ない旅行書シリーズの決定版。
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