第13回 ウルグアイで予想外の災難【嵐よういち・海外裏ロード】
南米の欧州
皆さんはウルグアイと聞いて何を連想するだろうか?
俺は正直、ブラジルとアルゼンチンに挟まれた小国としか思いつかなかったし、訪問する前までウルグアイ人に遭ったことがなかった。
ウルグアイの正式国名は「ウルグアイ東方共和国」。首都はモンテビデオで、面積は日本の約半分。それにしても、面積が日本の半分で人口が343万人(2016年時点)って、ずいぶんと少ない。モンテビデオの語源はグアラニー語で「鳥の住む川」という意味だ。
2011年4月、俺と後輩のオガミノ君は夜8時にモンテビデオの空港に到着した。空港は近代的でどこかヨーロッパ風である。入国審査は簡単なものであったが、俺たちの後ろにいる6歳くらいの男の子を連れた親子が気になって仕方なかった。母親も父親もおそらく地元の白人なのだが、子供は少し東洋の血が混じっている感じで、おまけに最初は俺の空耳だと思っていたのだが、子供が日本語を話しているのである。
その子供は、母親とは日本語、父親とはスペイン語でそれぞれ会話をしている。だが、オガミノ君は全くそんなことに気がついてないようで、それを言うと「マジですか? そんなわけないでしょ」と言ったのを聞いていた母親が日本語で「日本人ですか?」と話しかけてきた。子供は俺らが日本語を話すのがうれしいらしくて楽しそうに話しかけてくる。なんだかまあ、複雑な親子関係みたいだが、入国早々、楽しい会話ができて良かった。
モンテビデオ中心部にある独立広場
特に何もない街
翌日から街を歩いてみるが、街中でマテ茶を飲んでいる人がやたらと多い。小さいポットにお湯が入っているらしく、それを茶器に注いで専用のストローを差し込んで抽出液を飲む。このマテ茶は、ビタミンやミネラルの含有量が多く、飲むサラダとも言われているらしい。ちなみに味は畳の味がする。
あと、隣国アルゼンチンと同じくらいにタバコを吸っている人が多く、この国は喫煙者である俺らにとっては、気兼ねなく吸えるのでうれしい限りだ。街の中心に数軒カジノがあるので行ってみたが、俺らはあっという間に合計100米ドル(約1万1000円)をスッてしまった。
いろいろと街を散策したが、はっきり言ってモンテビデオは噂通り、特に何もない街である。
独立広場にあった建物。古くて変わっている
泥棒に遭遇
俺とオガミノ君は街の中心地を歩いていた。入口に宝石店がある小さなショッピングセンターがあり、少し中でも見るかと思って入ると、俺らの後方で「キャー」という女性の叫び声がした。振り向くと、浅黒い男がこっちに走ってきて、俺らの前をすごいスピードで通り過ぎた。その後ろにはスーツを着た身なりの良い50代くらいの男と、ワンピースを着た白人の女が追ってきて、早口のスペイン語で「泥棒だ! 捕まえて」と叫んでいる。
これは大変だ……すると、泥棒の走って行く方向にいたガタイの良い男がそれを追い、あっという間に捕まえ、手を後ろにして手錠をかけた。周りにいた人によると、泥棒は入口にあった宝石店から宝石を盗んで逃げたらしく、捕まえた男は非番の警察官だったという。いきなりの逮捕劇に夢中になっていた俺は、写真を撮るのも忘れていた。
どうやらモンテビデオも平和な街ではなさそうだ。
海岸沿いのランブラ通り
セーロ要塞を目指すも豪雨
俺らは行くところもないので、「セーロ要塞」を訪問することにした。そこからはモンテビデオ湾と市街が見渡せるらしい。ただ、このセーロ要塞周辺では強盗事件が多発していて危険らしく、現に旅仲間は、この場所に行く坂道で強盗に襲われてカメラと現金を奪われている。
俺らはホテル近くの大通りからバスに乗り込んだ。ここから1時間くらいかかるらしい。俺はバスの運転手に行きたい場所を告げ、着いたら教えてくれと伝え、運転手は面倒くさそうにうなずいた。バスに乗って5分で大雨が降ってきた。折り畳み傘もあるし大丈夫だろう。
時間がどんどん過ぎ、人が次から次へと降りていく。そしてとうとう俺ら2人だけになってしまった。雨は依然降り続いている。俺は不安になり、運転手に「セーロ要塞に行くにはどこで降りたらいいんですか?」と尋ねると、この運転手は、どうせスケベなことでも考えていたのだろう、俺らの存在を忘れていた感じで、
「え、あ、そうか。次だよ、次」
大丈夫なのかよ。そして1分くらいすると運転手は言う。
「ここで降りろ」
ドアが開いたので降りると、そこに待っていたのは豪雨であった。俺は折り畳み傘を出すが、こんな小さな傘では役に立たない。オガミノ君は傘を持っていない。この男は旅に必要な物を肝心な時に持っていないのが特徴だ。折り畳み傘も旅の途中で何回も「買え」と言っているのに、警棒を2本も買っているくせに傘は買わない。反省の意味も込めてビショ濡れにさせてもいいが、奴は体調が悪いし、一眼レフカメラも持っているので仕方なく小さな傘に2人で相合い傘である。
雨は小降りになり、俺らは病院らしき建物付近を通った。外にいる人は皆無で、なんだか不気味だ。こんな場所に強盗が出たらアウトだろう。それよりも、2匹の野良犬がこの建物の前をフラついて、こっちを警戒しているのが何よりも怖い。俺は犬が苦手で、世界中の野良犬がいなくなればいいと思っている。
市内移動はバスが便利
何十匹もの犬がトラックに
俺らは道に迷い、あまりの激しい雨で視界も悪くなっている。1人の婦人が通りがかったので道を聞くと、どうやら行き過ぎたようで、バスを降りたところを曲がって坂道を登るらしい。戻ろうとすると、遠くから恐ろしく大きな音が聞こえてきた。
「キャン、キャンキャン、ワン、ワンワン!」
俺とオガミノ君は顔を合わせた。この状況が俺らには全く理解できないのだ。恐ろしい音はどんどん近づいてくる。
どうやらこの音は犬の鳴き声か……どうなっているのだ?
「ワンワンワン、キャンキャン、ワンワン」と、数匹、いや、何十匹もの犬の塊が束になってこっちに向かってくる感じだ。
俺らは予想もしなかった状況になり、恐怖で一杯になった。すると、1台の中型トラックがこっちに向かってくる。そこから音、いや、犬の鳴き声がどんどんと近づいてくるではないか。さっきまでいた2匹の犬が激しく興奮し、吠えながらトラックを追いかけている。トラックは俺らの横を通り過ぎたが、何十匹もの犬がトラックの中にいたのは確かで、あの鳴き声は地獄からの叫び声に聞こえて仕方なかった。
トラックを追っていた2匹の犬が戻ってきた。興奮していて怖いので俺らは来た道を戻った。
モンテビデオ中心部の街並み
いったい、あのトラックに入れられた犬たちはどこに行くのであろうか? 今は考えないようにしよう……。
再び激しい雨が襲ってきた。小さな折り畳み傘など役に立たず、体は濡れまくって体温も下がってきて寒い。俺はもう嫌になってきた。犬が吠えているのを聞いてから怖くて仕方がない。それにこれから登る坂道を見たが、地面がドロドロになっているし、人が誰もいなくて非常に不気味だ。俺は別にセーロ要塞に特別行きたいわけではなかった。だが、俺の口からは「止めよう」とは言えなかった。一応、取材ということでオガミノ君をむりやり連れてきたからだ。どうしよう……。
俺らは汚い雑貨屋の入口で雨宿りをした。オガミノ君が口を開いた。
「嵐さん、申し訳ないんですけど、こんな状態で行っても良いことが一つもないと思うんですよ。今日はなんだかついていないみたいだし……」
俺は考えているフリをしながら次の言葉を待った。そしてやつは言いにくそうに言った。
「明日にでも出直しませんか?」
俺は心の中でガッツポーズを取りながら冷静に言った。
「それは正しい選択だと思うよ。明日また来よう」
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