アンヘレスでパスポートの盗難被害、スリの手口と今後の対策
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海外旅行の際の旅券(パスポート)の盗難……よく耳にする最悪の話題です。「自分は盗まれた経験がないし、対策も施しているから大丈夫」と思い込んでいました。このほど、2018年7月のフィリピン・アンヘレス旅行までは――。

ここ数年、年間6回ほどの海外旅行を続けています。お金を少しでも浮かせるため、LCC(格安航空会社)をよく使うので、有料の荷物預け入れを避け、機内持ち込みができる限界の大きさのバックパックとボディバッグ(斜め掛けカバン)のセットで旅をしています。

ボディバッグ
いつもの相棒たち=NIT撮影

自宅から滞在先のホテルまでの行き帰りの移動時は、バックパックを背負い、パスポートやお金、電子機器などの貴重品が入った、本来は背中に斜めに掛けるボディバッグを前掛けにします。飛行機内ではそれを手荷物にして肌身離さず持ちます。これで今までスリにも合わず、トラブルもなかったので、「最善策を施している。盗難の被害に遭うはずがない」と思っていました。

浮かれ切った気分が災い

旅の往路は当然、浮かれるものである。これからの楽しみが想像できるからだ。自分も例外なく浮かれていた。

搭乗した飛行機は成田国際空港を離陸し、5時間ほどでフィリピン首都マニラのニノイアキノ空港に着陸。携帯電話SIMカードのカウンターで対応するお姉さんに「You so cute」と言って笑いを誘う。目的地が近づくにつれ、浮かれ度もアップするものだ。

パンパンガ州のリゾート地アンヘレス行きのバスに乗り(正確にはクラーク国際空港行き。歓楽街フィールズアベニュー至近のホテルに滞在するため、商業施設「SMシティークラーク」で降りる)、同行者と今回の計画を大笑いしながら話し合う。実に浮かれていた。

バスは帰宅ラッシュに巻き込まれたためか、ニノイアキノ空港からSMクラークまで3時間半もかかった。到着時間は21時30分。非常に疲れたが、到着の喜びで気分は高揚していた。

ホテルまでは乗り物に乗るべき

バスがSMクラークに到着すると、ホテルまでの交通手段は大別すると下記の通り。

(1)トライシクル(3輪タクシー)
(2)タクシー
(3)徒歩

タクシーは、スタッフが500ペソ(約1050円)か600ペソ(約1260円)の看板を持っていたので即却下。定番は100~200ペソ(約210円~420円、交渉制)程度で移動できるトライシクル。安全だし早い。これを選択するべきだったが、18年3月に来た時に、ホテルまで徒歩で移動しており、その思い出をたどりたかったので、今回も歩いて移動することにした。

旅慣れた同行者もいるし、装備はいつもと同じ。これまでの浮かれていた気分を沈め、夜の繁華街通過に向け緊張感を持った……はずだった。

3か月ぶりの景色に気分高揚

SMクラークから、滞在先の「スコアバーズホテル」までは歩いて15分ほど。われわれのルートはこうであった。

アンヘレスマップ
同行者の定番ルートだったが……

SMクラーク東側の歩道橋で1STストリートを渡り、歩道橋を下りて大通りの信号を渡り、「Transport Hub」と記されたジプニー(フィリピンの乗り合いバス)の車庫を通ってフィールズアベニューに出る。そこを南に渡って左折してまっすぐ歩き、レストラン「ココモス」を右折、1本目を左折してホテルへ。

時間は22時近かったが、歓楽街のため明るく、人通りも多いので安全だと思っていた。

歩き始めると雨が降ってきたが、傘をさすほどではなかった。「あと少しで天国だ!」という浮かれた気持ちと、「ホテルに着くまでが往路です。気を引き締めて」という警戒心が入り混じって歩き始めた。

気付かぬうちに……

歩道橋を後にし、大通りの信号を渡り、ジプニーの車庫を過ぎてフィールズアベニューを南側に渡る。ここまでくると、軒先にゴーゴーバーやディスコがあり、歓楽街の雰囲気が出てくる。と同時に、マッサージ嬢の勧誘とストリートチルドレンも増えてきて、歩けば誰かに声を掛けられるようになる。よく考えれば異常な世界だ。

昼間

昼間
昼間の風景=NIT撮影

しかし、頭は既に天国モード。ストリートチルドレンをかわしながら、お店に目を向けるとセクシーな衣装を身にまとった嬢が笑顔で声を掛けてくる。この浮世離れした光景に一気にテンションが上がる。同行者と嬢の感想を言い合ったり、これからのスケジュールを笑顔で話し合ったりしていた。気分は絶好調。その時だった。

身長140~150センチメートルほどの大きなストリートチルドレンと思わしき少年が前方から私の右側に横並びに付いてきて、左手を差し出してきた。一般的なストリートチルドレンは身長100~120センチほどなので、彼は相対的に大きい。いつものように手振りと言葉ではねのけようとするが、しつこく付いてくるので手で払いのけた。

よく見ると、長年着てきたであろう、伸び切って薄汚れたTシャツの袖に右腕がない。この時、懐疑心なくこの少年を気の毒に思ってしまった。その後、何度も同じことを繰り返してくるが、いつもだったらとても嫌な顔をして強く払いのけるところを、優しく申し訳ない気持ちで払いのけた。

3~4回同じことをされただろうか。あまりにもしつこかったが、薬局の前を通りがかった時、その少年は誰かに引き剥がされた。アイドル握手会のそれのように……。

私はその時、「おまえしつこいぞ、その日本人が迷惑してるだろう!」と、ストリートチルドレンを怒ってくれる人なんだろうと、軽率に思ってしまった。今考えるとそんなわけがない。何かがあったに決まっている。

その後、同行者に追いつき、いよいよ「WALKING STREET」の看板に差し掛かった時、異変に気付いた。

写真③
これが見えると一気にテンションが上がる=NIT撮影

ホテルチェックインの際に……

写真を撮ろうとスマートフォンを取り出すために、前掛けのボディバッグを開けようとすると、チャックが半開きになっている。この時は「あれ? 開けっぱなしで来てしまった。いつからだ? バスの中かな? 用心しないと」と思った程度だった。「盗難」「スリ」などという言葉は頭から出てこなかった。そして、バッグの中からスマホを取り出し、写真を撮る。

撮影後、ホテルに到着しフロントの前に。チェックインのためにパスポートを取り出そうと、ボディバッグを開けて、パスポートケースを取ろうとしたが……ない!

「まさかなくなるはずがない」と、めちゃくちゃ焦る。「ヤバい、なぜだ!?」という気持ちしか出てこない。さっきまでの浮かれた気分から一気に地獄に突き落とされた気分に。

こうしたトラブルがあった時、わりと冷静に対応できるタイプだと思っていたが、巻き起こった事実が信じられず、これは夢じゃないかと思うぐらい、相当混乱していた。

入れていないはずのバックパックも全て探したが、当然ない。同行者とホテルのフロントに報告。ホテルスタッフが数人、フロントまで駆けつけてくれて、「スリじゃないか? 心当たりはないか?」と心配してくれる。

この時初めて、スラれたと思い始めた。

心当たりはただ一つ

パスポートケースには、パスポートや現金1万円・日本のSIMカード、プライオリティーパス、海外各地の会員証などが入っており、なくなってしまったら最悪である。

心優しいフロントスタッフは、「荷物を置いて探しておいで」と、パスポートなしでもチェックインさせてくれた。警察に駆け込むよりも、まず自分で探しに行った方が後々、警察の円滑な捜査につながるからだそう。急いで案内された部屋に入り荷物を下ろす。同行者もかなり心配してくれて、一緒に探しに行ってくれるという。本当に申し訳ない気持ちだった。

スコアバーズホテル
スコアバーズホテルのスタッフの親切な対応には感謝しかない=NIT撮影

同行者と部屋を出て、道すがら心当たりについて話したが、すぐに答えが出た。右手のない大柄のストリートチルドレンと思しき少年だった。

少年を探しに薬局へ

ホテルを出て、少年が私から引き剥がされた現場、薬局方面に向かう。本来であれば、同行者とゴーゴーバーに行っている時間。貴重な時間を割いて付き合ってくれた同行者には心底感謝している。

薬局近くになってくると、路上に落ちていないか探しながら歩く。この時、「頼むから落ちていてくれ!」という心境で、もはや神頼みに近い状態。しかし、財布にも似たパスポートケースが落ちていたら、絶対に誰かが拾うに決まっている。確率の低いことをしている実感はあった。

ほどなくして薬局に着いた。まず少年を引き剥がしてくれた人物を探したが、見つからない。この時点で手がかりがなくなったと思い、心底落ち込む。

わずかな願いも込めて、周辺のゴミ箱や通りを探していると……。

「3P、3P!」と、おじさんが嬢4人を引き連れて声をかけてくる。今は絶対にそれどころじゃない。心底鬱陶しかった。完全に無視しながら探していると、おじさんと嬢らは同行者の方に話しかけている。

すると、同行者が何やらおじさんたちと話している。英語が堪能な同行者は、彼らに事情を話し、パスポートケースを見てないか聞いてくれていた。まもなくして同行者が「NIT、パスポートあるってよ!」と大きな声で私を呼んだ。信じられなかったが、「マジで! いくらなんでもそんなジョークは言わないよね」と思い、同行者と3Pおじさんたちの方に走って行った。

おじさんと嬢が指差した先は

急いで同行者と3Pおじさんたちの方に駆け寄ると、おじさんと嬢らが指を差していた。その方向を見ると、少年を引き剥がしてくれた人物がパスポートケースを持ってスクーターにまたがっている。横には同じポロシャツを着た人物が同じくスクーターに乗っている。その瞬間、「これはおまえのだろ。後ろに乗れ」と言われ、同行者もそれぞれのスクーター後部座席に乗り、発進。向かっている先は警察署のようだった。

アンヘレスマップ
ホテル、薬局、警察署の位置関係

だが、着いたのは警察署ではなく、隣の「ACEPO」(ANGELES CITY ENTERTAINMENT PROMOTION OFFICE)という建物。当初、彼らを警察だと思い込んでいたが、アンヘレスの治安を守る自警団だった。

アンヘレス自警団
所内は映画で見る警察署のような雰囲気であった=NIT撮影

建物のドアを開けると、所長らしき人が目の前に座っており、ほかに5人ほど同じポロシャツを着た隊員らがいた。建物内に入ると、右側に右腕がないストリートチルドレンが悲しそうな顔をして体育座りをしていた(正確には「右手が無いふうに装っていた」だが)。隊員らに相当怒られた後に違いない。

所長らしき人のデスク前まで行くと、少年を引き剥がしてくれた隊員が所長にパスポートを渡す。所長はパスポートを開き、写真と私の顔を見比べる。すると、「中身を出して確認してもらえ」と言ったのだろうか、同隊員がパスポートケースの中の物を全てデスクの上に出した。

先日、ベトナム・ドーソンに行った時に両替したドン紙幣に至っては30枚程度を、1枚1枚丁寧に。パスポートや日本のSIMカード、プライオリティーパス、ダイバーライセンス、海外の各種会員証、計1万円程度のドン紙幣が並ぶ。まるで映画やニュースで見るような展開になった。

イメージ
パスポートケースの中身はこのようなイメージで並べられた

指示に従い、なくなっているものはないことを確認すると、別の隊員がカメラを手に撮影し始めた。デスクに並べられた私物、私と同行者、隊員と私、隊員と私と同行者など。さまざまなショットを撮影された。それが終わった後、感謝の気持ちとしてチップを渡そうとしたが、所長らしき人に「チップはいいから飯を食わせてやってくれ」と言われた。

全員と固い握手をし、各隊員から「次から気を付けろよ」「アンヘレスを楽しんでいけ」などと言われて送り出された後、近くのスーパーマーケットで軽食とドリンクを買い、差し入れた。

今回の手口を検証

●場所
アンヘレスマップ
狭い歩道に多数の通行客、ストリートチルドレンがたくさんいるこのあたり

●容疑者の容姿
容疑者の少年は身長140~150センチで細身、ダボついた薄汚いTシャツに短パン姿。後ろから見ると一見、右腕がないように見えるが、Tシャツの中に右腕を巧妙に隠している。よく見ないと分からないが、Tシャツの左脇に穴が開いている。自警団事務所で確認。

●手口
前から左の手の平を表に向けて出し、後ろを見ながら近づいてくる。正面を向いて来ないのはおそらく、右腕をTシャツの中に隠しているのを気付かれないため。通行人には左手で施しを受けようと接近してきたと思わせ、通行人の右側にくっついてくる。実際は左脇のTシャツの穴から右手で前掛けバッグのチャックを開け、中から貴重品を盗む。私には同じことを3~4回してきた。盗むか気付かれるまで繰り返すのだろう。

●犯行時の自分の対応
「大きなストリートチルドレンが来たな。邪魔だな」と思い、いつもの対応、「お金あげないよ」と手を振ったり、「NO」と言ったりしたものの、それでもしつこく近寄ってくるので、手でソフトに払いのけた。

今後の対策
(1)同じような容姿の人物を発見したら、近づかれないようにする。
(2)もし近づかれてしまったら、貴重品を守りましょう。手を出したら暴行になってしまうので注意。
(3)前に掛けるバッグにも、南京錠などの鍵をかけておく。
(4)腹巻型のシークレットポーチが2000円程度で買えるので、貴重品はそこに入れるのもあり。
(5)そもそも観光客丸出しの状態で、徒歩で長時間歩かない。素直にトライシクルに乗るべきだった。

結果、見つかったとはいえ、旅行自体が無に帰す危機で、同行者にはかなり迷惑をかけてしまった。私があまり下調べをしない情弱(情報弱者)だったために起こった事件であったが、今回は本当に運が良かった。今後は一段と気を引き締めて各国を旅したいと思う。(NIT)

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ほぼ日刊ほいなめ新聞編集長&ライターとして頑張る日々。
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