第40回 野宿の災難、中央アジアの旅(前編)【嵐よういち・海外裏ロード】
ウズベクとキルギスの男旅
以前3回にわたって本コラムで紹介したことがある「野宿」という男と10月に、ウズベキスタンとキルギスを旅した。
やつはどこかぬけていてドジだが、旅の最終日までの失敗はミニバスでの移動中に8000円もする充電器を車内に置き忘れてしまったことだけだった。
10月7日 日曜日。俺らはキルギスの首都ビシュケクにいた。同日のフライトで、野宿は日本に帰国、俺の方はタイの首都バンコクに移動する予定だった。ロシアのS7航空の便で、ノボシビルスクというシベリアの都市までは野宿と一緒で、そこでそれぞれ乗り換えるのだ。
ビシュケクの市場。偽警官や悪徳警官が多く、被害も報告されている
会話から漂う違和感……
俺らは夕方のフライトなので、宿に荷物を預けてカフェでくつろいでいた。
ビシュケクの街には「BFC」というKFCのパクり店があった
BFCで注文したら、やたらと時間がかかった。味はすぐに飽きるものだった
「野宿、帰国したらやることあるの?」と質問すると、何か様子がおかしい。
「あれ? 帰ったその日に友だちと遊ぶ約束をしていたのですが、帰国日を1日間違えたみたいです。おかしいな。断りのメールしておきます」
俺は「帰りの日にちくらいはしっかりとチェックしておかないとヤバいよ」とたしなめた。
その後、宿に戻ったが、そこのオーナーは若い時の巨人・原辰徳監督にそっくりのさわやか青年である。
俺らが泊まった宿。ここで事件が起こる……
「タツノリ」は5年くらい前までサッカー選手だったらしく、サッカー好きの野宿と盛り上がって話をしている。その後、俺らは彼にタクシーを呼んでもらって空港に向かった。
ホテルの鍵返却を失念
フライトの3時間前に空港に到着したが、まだチェックインが始まっていない。俺らはいすに荷物を置いて休む。野宿はのんきに「安いスマートフォンがあったら買いたいな~」とつぶやきながら携帯ショップの中をフラフラしている。
それから1時間後、ようやくチャックインが始まった。ポケットを何気にまさぐると、宿の鍵が出てきた。しまった……宿を出る時にタツノリと話し込んでいて、鍵を返すのを忘れてしまっていたのだ。
このようなことは過去に2~3回あり、宿の方もスペアがあるので、悪いとは思ったが、諦めるしかない。野宿は「あの兄さん、優しい人だったので返してあげたいですね」なんて言っている。
キルギスの市場には安いスマホがたくさん売られている。偽アイフォンなどもあるが、英語が通じない場合が多いので難儀だ
あり得ないミスが発生!
俺と野宿は行き先が違うので、別々にチェックインすることにした。俺は荷物代を支払わないといけないので、搭乗券と旅券(パスポート)を持ってカウンターの端で手続きをしていると、なぜか野宿も、係員がやつのパスポートを持ちつつ、俺の横にやって来た。どうなっているんだ?
「なんで、野宿がここにいるの?」
「分かりません」
俺は荷物代の支払いで現地通貨が足りなくなったので、野宿に32米ドル(約3600円)渡して両替してもらう。
係員が俺に確認するように話しかけてきた。
「あなたはバンコク行きだよね? 東京じゃないよね?」
「俺はバンコクです。だけど、この友人は東京です」と説明すると、怪訝(けげん)な顔をしている。いったい、どういうことだ。係員が何人も集まってきて野宿に説明するが、やつは英語ができないので俺が助けに入る。英語が堪能な若い女性がやってきて言う。
「あの人のフライトは今日じゃなくて、昨日でした」
「え……?」
そして呆れるように「なんで昨日、あの人は来なかったんですか?」と聞いてくる。
「知りませんよ。こっちが聞きたいぐらいで、俺も今知って驚いているんです」
野宿に説明すると、やつも唖然(あぜん)としている。野宿にチケットを買い直させて帰国させる方法を第一に考えたが、ビシュケクからノボシビルスクまでのフライトは満席でチケットはない。仮にあったとしても、そこから東京までのフライトはこの日はない。つまり、最低もう1日、この街にとどまって、インターネットでチケットを買って帰国しなければならないのだ。
少し幸運なのは、やつは今回の旅の予算として1500米ドルを持ってきたが、物価が思ったよりも安かったため、800米ドルも余っていて、その金は、いつも持ち歩いている銀行封筒の中に入っている。それにクレジットカードもあるので、チケットを買うこともできる。
家庭を持っている人や会社員、仕事の予定が詰まっている人はかなり大変だと思うが、野宿は失業して1年経っており、家庭もなく、仕事や大事な予定もないのでとりあえず大丈夫だ。
俺が粘ってどうにかならないかと交渉を続ける中、やつは
「あの~、僕の大事にしていた帽子が見当たりません。たぶん、さっき休んでいたいすのところにあると思います」
どうでもいいことをのんきにぬかしやがる。
「おい、今はそれどころじゃねえだろ! 乗ろうと思っていた飛行機に、日にちを間違えて乗れなくて、もう1日滞在なんて聞いたこともないぞ。そんなこと言っている暇ないだろ!」
野宿をその場にいさせ、俺が帽子を探しに行くが、既に誰かにとられたようでなかった。チェックインカウンターに戻って、「野宿、なかったよ」と伝えると、信じられないことを言う。
「え、ショックです。マジで飛行機に乗れないこと以上にがっかりです」
こいつはアホか!
「大体、帽子を忘れるのが悪いし、何のんきなこと言っているんだ! そんなの今度買ってやるよ」
心配だが別れの時が迫る
そんなトラブルに見舞われつつ、俺の搭乗時間が近づいてきた。
「嵐さん、もう時間が迫っているので、行ってください。僕は大丈夫です」と野宿が言う。
いや、大丈夫ではないと思うぞ……。だが野宿は何か国か旅をした経験があるし、クレジットカードもあるし、現金800米ドルもある。ビシュケクの街も3日間滞在していて慣れているし、どうにかなるだろう。
俺はとにかく行かなければならない。
「野宿、俺は行くけど、心配だから必ず連絡しろよ」
俺らは握手して別れた。なんでこんな別れ方になるのだ。野宿はその後、悲劇のどん底から奇跡を起こすことになるが、その時は想像できるはずもなく、俺は搭乗口に急いだ。(つづく)
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