第48回 セブ島の歓喜【嵐よういち・海外裏ロード】
セブ島は栄えている。東横インは好立地にあり、下にはショッピングセンターが入っている。

行く理由

フィリピンのセブ島はリゾート地として昔から知られ、今では英語の語学留学で来る人も多い。
セブ市、マンダウエ市やマクタン市は共に首都圏となるメトロ・セブを形成し、その人口は225万人だ。日本人は5000~7000人が住んでいるとされ、留学生や観光客も多いので日本食レストランの数は相当あり、セブ住民も日本食が大好物だという。

日本からはLCCのセブ・パシフィック、フィリピン航空、全日空などの直行便があり、時期にもよるが、往復・約4万8000円で時間も5時間程度。
俺はそんな近いのに行ったことがなかった。5年ぐらい前までさして興味はなかったのだが、相棒でもある丸山ゴンザレスやこの連載でも登場する和田虫象が、短期留学を仲間のミオさんという方が経営する語学学校「ストーリー・シェア」で勉強してきて俺も少しずつだが興味を持つようになっていた。

ミオさんはフィリピンに長く住む日本人で、セブ、バギオ、マニラで英語学校、またセブでは宿も経営している。

語学留学に興味のある人は、料金も安いし考えてみるのもいいかもしれない。そのミオさんと日本で何回も会っていて、その都度「今度、セブに行きます」と言っていた。
しかし諸々の都合でそれがなかなか叶わないでいたが、ついに実現することになった。行くことを伝えるとミオさんが「私の経営している宿に泊まって下さい。ただ、嵐さんが滞在する4日間の最初の2日は仕事でいないので、すいません」と連絡があった。

空港到着

バンコクを飛び立ったセブ・パシフィックはフィリピンの首都、マニラに到着した。この空港に降り立つのは24年ぶりだ。当時の空港は魑魅魍魎のような場所で、一歩空港を出るとガラの悪い白タクや、わけのわからない連中が大勢いて、現に被害に遭う旅行者も多かった。

空港内も酷いもので空港スタッフは、俺の被っていた帽子を見て「これ、カッコイイね。頂戴」なんてぬかす。断ると、「だったら、なにかと交換しよう」なんて言ってくるしまつだ。
トイレに入れば意味もなく男が3,4人いて、用を足し終えた後、勝手にペーパータオルを渡してきて「チップ」と要求。断ると、肩を揉み始めるのだ。

これが首都の空港か! 更にその数年後、トランジットでマニラの空港に寄り、トイレを使うと出口にスタッフがいて、手を出して「チップくれよ」と非常に横柄な態度で言われて印象は最悪であった。
だが、その後訪れた人から聞いた話では、かなり様変わりしていたようだ。そんな楽しみもあって降り立ったら、どこの先進国と同じような綺麗な空港であった。怪しい奴も皆無である。

変なラーメン

国内便にチェックインをして両替所に入ったが、世界中の通貨が両替出来るんだなと感心した。昔は「円」が最強で、後はUSドルばかりだった。
バンコクとマニラ間のLCCは機内の食事が有料で、特に食べたいものもなかったので、マニラの空港に着くと俺は空腹であった。乗り継ぎ時間は微妙に少ないので急いで食べなければならない。すると一軒の日本のラーメン屋を発見。

そこはローカル臭がしてヤバい感じがするが、入ってみることにした。
チャーシュー・メンと餃子を注文し、それらは5分で運ばれてきた。餃子を食べてみるが普通。ラーメンはなんだがツユが黒い。なんでだろう? と思いながら食べてみるが、スープが麺つゆである。こんなことが…… だが、長い旅の後で醤油味に飢えていたのか、不思議なことに、それはそれで美味しかった。

いきなりトラブル

マニラからセブまでは1時間半のフライトなので、あっという間に到着した。セブの空港に到着したのは19時であった。

セブ島は栄えている。東横インは好立地にあり、下にはショッピングセンターが入っている。

セブ島は栄えている。東横インは好立地にあり、下にはショッピングセンターが入っている。

ミオさんから、「配車アプリを頼み、運転手に住所を教えて連れてってもらえ」と言われていたが、シムカードを買うのが面倒だし、タクシーを使えば問題なしと思っていた。しかしこれが間違いだった。

タクシー会社のスタッフにタクシー乗場まで誘導され、タクシーの車のナンバーと時間が刻まれた紙を受け取る。運転手が悪さをしないようにする作戦だ。なにかあっても後から抗議すれば一発なのである。だがセブのタクシー・ドライバー、この人だけではないと思うけど問題点がある。

1・車にナビゲーションがないのは仕方ないとして、スマホも携帯電話も持っていない
2・『カン』が非常に悪い。普通、このような職種の人は一般の人よりもいいはずだが、そうではない
3・方向音痴

一方、俺の方で悔いが残ることは、ミオさんの言う通り配車アプリを頼めば問題なかったようだし、スマホの地図があればどうにかなったので、空港でシムカードを入れておけばよかった。

後にミオさんにも伝えたが、宿の方にも問題があった。非常にわかりにくい場所にあり、細かい住所が示されていないし、遠くからわかるような看板も掲げられていなばかりか、宿の電話番号もないのだ。それらの問題点が複雑に絡み合い、この後、大変なことになる。

犬だらけ

最初の予定では19時40分ぐらいに宿に到着し、ビールや食い物でも買ってきて、ネットでもしてゆっくりしようと思っていた。タクシーは飛ばしまくり、ミオさんのゲストハウスがある高級住宅地に入った。

すると、運転手が迷い始めた。まあ、それでもどうにかなるだろう、そんなことを呑気に考えていた。そしてグルグル辺りを周る。俺のスマホに書いてある住所を運転手は見ながら外に出て人に聞きまくる。
俺も出てみたが、東京の真夏の熱帯夜みたいな不快指数マックスな蒸し暑さでベトベトの汗が出て、気分が一気に悪くなってくる。地元の人に聞いても場所がわからないので、移動して同じように尋ねる。

タクシーで走り周って気になったのだが、セブ島は大きいけど、人が多すぎる。人口が多いので仕方ないが、夜でも人が大勢歩く姿が目に止まるし、道端でたむろっている。

俺が車内から外を眺めていて恐怖を感じたのは、野良犬がやたら多かったからである。セブは『野良犬天国』なのだ。繁殖力の高い犬たちが、気候の良さと餌の多さで増えたのだろう。道を塞ぐようにどこの路地にも7~10匹の犬がいるのだ。

タイやインドの犬とは違い、攻撃的ではなく、大人しい。聞くとセブの人は犬が好きで可愛がる人が多く、それでもセブ市としては、犬を処分しないといけないので犬狩りを始めようとするが、なぜかそれは1週間前から「いついつやる」と告知されるので、市民が犬を匿って自宅の家に避難させるということもあるのだとか。俺はこの犬の多さに一発で嫌になるが、とりあえず宿には到着したい。

続く

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この記事の作者

嵐 よういち
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旅行作家、旅行ジャーナリストをやっています。
代表作は、海外ブラックロード・シリーズ。
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