第32回 売春婦とは二度と付き合わない(第1部終了)【新羽七助のゴーゴーバージャーナリストへの軌跡】
平日の午前中、会社で仕事していると、バンコク・ナナプラザのゴーゴーバー「レインボー3」で働く同棲相手の彼女、レックが荷物をまとめて出て行ってしまった。仕事なんかやっている場合ではなかったが、女に振られたくらいで休むわけにもいかない。その日は取材がないことも奏功。歯を食いしばって、夕方までなんとかパソコンにかじりつき、仕事を進めた。
どうにかこうにか仕事を終えた。レックは私と別れたからには、ゴーゴー嬢として仕事にさらに積極的に取り組むだろう。レインボー3に行けば、彼女に会える可能性が高かったが、あえて行かなかった。
同店のダンサーやスタッフらに対し、未練がましいストーカーのような印象を与えたくなかったこともあるが、何よりも、この状況下でレックに会ったら、怒りや絶望で彼女をぶん殴ってしまうかもしれないという恐れがあった。自制するのが得意ではないのだ。
夜に数回、レックに電話してみたが、もちろん出てくれない。今この時間も、彼女が他の男とセ●クスしていると思うと、胸が苦しくなった。
振られた男というのは、実に惨めなものである。食欲もないので、コンビニに寄って必要最小限の食料と大量のビールを買い込み、彼女の荷物がまったくなくなった殺風景な部屋でひとり寂しく泥酔、ふて寝した。
アパートの名義変更がマスト
以降、レックにはあえて電話せず、週末までなんとか集中して仕事を続けた。どんな職業でも同じだと思うが、仕事中までプライベートの問題に頭を悩ませていると、思いもよらぬミスを犯してしまうからである。悶々とした気分は続いていたが、振られて独りぼっちになってしまったという喪失感や絶望感は徐々に軽減。自分が現在置かれている状況を冷静に考えられるようになってきた。
まず第1に、同棲していたラチャダーのアパート「シワラーマンション2」の部屋は、彼女が賃借人になっている。私はこの状況下、すぐに引っ越しできるような余裕はない。同アパートに住み続けるには、賃借人の名義を彼女から私に変更するとともに、彼女が所持している部屋の鍵も返してもらう必要がある。
第2に、新しい液晶テレビを買う必要が出てきた。テレビは彼女の物だったので、当然のごとく持って行ってしまったのだ。当時はタイのインターネット速度が遅く、動画サイトで日本のバラエティー番組などを簡単に見られるような環境ではなかった。私のDVDプレーヤーは残っていたので、テレビさえ新調すれば、以前のように衛星放送のNHKワールドなどに加え、日本ドラマのDVDもまた見られるようになる。
レックがどさくさに紛れて、私の荷物まで持って行かなかったのは、不幸中の幸いだった。
第3に、別れたからには、キーニャオ(けち)と言われてもかまわないので、彼女の誕生日に贈った金の指輪を返してもらいたかった。バンコクの商業施設「シーコンスクエア」に入居する金行で、1万5000バーツ(約5万円)ほどの指輪を買ってあげた経緯がある。
金の指輪はくれてやる
やっとこぎ着けた土曜日の午後、シワラーマンション2からほど近いハイパーマート「カルフール」(現在の「ビッグCエキストラ」)で、韓国LGエレクトロニクス製のテレビを購入。自分で部屋に持ち帰って据え付けた。
その後、レックに架電。少し落ち着きを取り戻したようで、ようやく電話に出てくれたので、部屋の名義変更の件を伝えると、すぐに来てくれることになった。
レックの立場に立って考えれば当然のことで、私が今後、万が一家賃を滞納すると、彼女の責任になってしまうからである。適当な性格のレックだが、お金の問題に関しては敏感だ。それだけは避けたいと考えるだろう。
アパート1階のロビーでレックと待ち合わせ、同階の事務所で部屋の名義変更を行った。彼女が入居時に支払った家賃2か月分のデポジット(保証金)1万8000バーツは、私が彼女に5000バーツ、5000バーツ、8000バーツと3回に分けて直接、分割払いすることで合意。分割払いにした理由はもちろん、収入が少ないことだったが、完済する前に復縁できないかという未練がましい魂胆(こんたん)もあった。
レックは部屋から荷物を持ち出した時と比べると、だいぶ落ち着いている様子。右手の薬指を見ると、私が買ってあげた金の指輪をまだはめている。別れたからには返してもらいたかったが、今もはめているということは復縁できる可能性があるのではないか……と楽観視し、返してもらうのは思いとどまった。代わりにこう尋ねた。
「レックちゃんのことが大好きだったのに、なんであの時、俺の話を聞かないで出て行ったの?」
「私も大好きだったけど、もう無理だと思った」
「ちゃんと話し合えば仲直りできたかもしれないのに……」
「うん……」
レックは泣きそうだった。愛情は残っていたが、話し合う意欲も語学力も不十分だったため、面倒くさくなって家出してしまったのかもしれない。彼女にもう少し論理的な思考能力があれば、やり直せる可能性もあった。
とはいえ、われわれが既に別れていることは紛れもない事実である。レックは部屋の鍵も返してきた。合い鍵をこっそりと作っていない限り、彼女が自発的に私の部屋に来ることはもうない。女性が常に周りにいることが当たり前になっていた私は、再び惨めな気分になった。
以降、月給が支給されると彼女に連絡し、デポジットに当たる借金を律義にこつこつと返した。1か月目はまだ未練たらたらで、食事に誘ったりしたが、忙しいという理由で遠回しに断られた。いったん離れてしまった女性の心をもう一度引き戻すのは非常に難しい。ほぼ不可能と言っても過言ではないだろう。
ただ、2か月目に入るとどういうわけか、私の心も冷め始め、3か月目にはもうどうでも良くなっていた。彼女と対峙すると、「なんであんなに好きだったんだろう……」とすら思うほどだった。熱しやすく冷めやすい性格は相変わらずだった。
一方、彼女ももはや指輪をはめていない。返してもらうのも面倒くさくなり、くれてやった。いや、既に売り払っている可能性も大いにある……。
借金を完済し、レックとはもう会う必要がなくなった。名実ともに別れた瞬間だった。別れるに至った理由を挙げるとすれば、自分の好きな女が他の男とセ●クスするのは許容し難い。これに尽きる。そして、こう決意した。
「売春婦とは二度と付き合わない」
2008年5月ごろの話である。その後は恋愛対象について、タイ人売春婦から素人へと大きく舵を切っていくことになる。(第1部終わり)
私の青春はナナプラザにあった=新羽七助撮影
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