【タイの屋台飯と現実と俺が思うことと】第2回 トムヤムクンは実は健康食だった!
1998年1月に初めてタイに来た時は、むしろひどい場所だと思った。同年9月、インドに行くために再度、首都バンコクの地を踏んだ。当時は、バンコクは世界的に見て航空券が安いと言われる都市だった。だからというのもあって、カオサン通りは小さな旅行代理店とバックパッカーが集まり、聖地とさえ呼ばれた。
そして、インドが強烈な印象だったため、年末の帰国前に数日間、バンコクに寄った時になってタイの魅力に気がつき、以降今に至るまでタイ好きとして生きている。インドから戻った後、「渋谷109」にあったタイ料理店でアルバイトを始め、本格的にタイ語も覚え始めた。
その当時はまだタイ料理も有名なものではなく、タイの米粉麺「クイッティアオ」はベトナムの米粉麺「フォー」と混同されているほどだった。唯一有名だったのは「トムヤムクン」くらいだ。
トムヤムスープは抗がん性が高い
トムヤムクンは最近こそ誤解が少なくなったが、トムヤム・スープのエビ入り版だ。魚のトムヤムを「魚のトムヤムクン」と言う人もいるが、それは違うのだ。トムヤムクンのクンは正確には「グン」と発音し、これがエビを指す。「トム」は煮る、「ヤム」は和える、あるいは混ぜるという意味になる。
タイ語は英語のように単語が変化することがない。また、料理名は固有の名前があるものと、調理方法をそのまま表すものがある。トムヤムは固有でもあるし、調理方法を表してもいる。
トムヤム・スープの定義は色や調理法ではなく、材料による。スープの素になるレモングラスやコブミカンの葉、「カー」というショウガの一種などが主材料で、これらを煮出したものがトムヤムスープだ。
タイではこういった鍋で供されることが多いが、大半の店でお玉とのサイズが合ってなくてすくいにくい
和食の技法のようにダシを取る概念というよりは、単に煮ている。これに唐辛子などを加え、「ナムプリック」というタイ風の味噌をヤムする。つまり混ぜる。それでトムヤムという名称になっている。
このトムヤム専用ナムプリックは、英語では「トムヤム・ペースト」と呼ばれ、一般的に想像できるトムヤムクンが赤いのは、このペーストが要因だ。タイでは、インスタント麺は日本料理の一種と思っている人が少なくないが、フレーバーはトムヤムが圧倒的に多い。慣れ親しんでいることもあるし、ナムプリックの味が濃いので、インスタント麺のカヤクやスープの素にパッケージしてしまえば、トムヤムを再現しやすいという事情もある。
インスタント麺のトムヤム味
トムヤムは日本だと白っぽい半濁スープが多いのではないだろうか。これはココナッツミルクを入れているからで、タイでは透明なスープもある。透明の方はココナッツミルクが入っていないので、辛みなどがややシャープな印象。俺がタイ料理を食べる時は大体、ビールを飲みながらなので、透明なスープの方が合っている。
当たり前の話だけれども、タイでは一般家庭の日常食はタイ料理だ。タイでもエビは物価指数から言えば、けっして安い食材ではないため、同じトムヤムでも主となる具材には鶏肉やイカ、白身魚を使う。家庭でもトムヤムは普通に食べるもので、前回の「ガパオライス」と同じように特別な料理ではない。
これだけ日常的に食されることで、実は20年ほど前に京都大学などが研究したことがあり、トムヤム・スープは抗がん性が高いという結論に至っている。世界的な消化器系のがん発生率と比較したところ、タイは半数以下だったことを受け、タイの食材を調査。その際に、レモングラスやコブミカン、カーに抗がん作用があることが分かったのだ。
タイ料理は「サムンプライ」と呼ばれる生薬を使う。パクチーや先のレモングラス、カーなどもその一種で、タイ伝統医学の漢方薬としても利用される。タイ人は中国伝統医学のように「医食同源」という考え方をしないが、タイ料理には自然と先人の知恵が詰まっているのである。
市場で売っているパクチー。煮出さずに食べる直前に入れるが、トムヤムに合った食材である
幻のトムヤムスープは永遠に封印
そんなトムヤム・スープの中で、俺がベストに挙げたいのは、妻の祖父がつくってくれた「トムヤム・ガイ(鶏肉のトムヤム)」である。妻の親族以外は食べることはできないし、昨年11月に祖父は亡くなっているので、まさに幻の逸品になってしまった。
祖父のトムヤムはペーストを使わないため、鶏の脂で黄色く見える
祖父のトムヤム・ガイは地鶏を絞めてつくる。いつも不思議に思うのは、祖父の家でも地鶏を飼っているがそれはつぶさず、近隣の家から買ってくることだ。1羽700バーツくらいなので、2100円くらいか。牛や豚もいたが、これらは一種の財産として確保し、何かあった時に売るようである。鶏もそのようなものらしい。
地鶏を絞める妻の祖父
タイ東北部で一般的な高床式家屋の台所
田舎では、鶏を絞めるのは男の仕事だ。だから、トムヤム・ガイはいつも祖父がつくる。バンコクでも一般家庭でトムヤムはつくられるのでそう珍しい話ではないが、やはり地鶏を食べられるという点では田舎だからこそだ。
血を抜いた地鶏を湯がいて毛を抜く
抜き残しのないよう火で炙る
ちなみに、日本の地鶏「軍鶏」は読みがシャモになるが、これはシャム猫と同じで、タイの旧国名「サイアム」が訛ったものだ。要するに、軍鶏はタイが発祥とされる。とはいっても、軍鶏はタイでも稀少だ。ブロイラーのように大量生産しないため、一般市場には流れない。バンコクでも地鶏を売りにした店があるが、それはかなり特殊な仕入れルートを持った店と言える。
内臓を抜き、丁寧に処理して一緒にトムヤムに入れる
イチオシはトムヤム雑炊
トムヤム・スープの具材であるサムンプライはタイ全土でいつでも容易に手に入る。だからこそ一般家庭でも頻繁につくられるわけだ。サムンプライからナムプリックまでがセットになった「トムヤム・スープ・キット」もあり、外国人もちょっと煮出すだけで簡単につくれるようになった。
俺も一度、自分でトムヤムをつくったことがある。トムヤムはサムンプライでダシを取るという概念はないため、例えば食堂でトムヤム・スープを注文すると、小鍋でちゃちゃっと煮て、ささっと出してくる。
これだけ簡単なら俺にもつくれるだろうと思ったが、煮出しても煮出してもどうもしっくりとこない。味に深みがないのだ。失敗したかと諦め、火を止めて器に入れ、いざ食べてみたら、普通にトムヤムの味になっていた。完全沸騰中は味が死んでいるようだ。家庭でつくる場合は、ちょっとだけ時間をおくのがコツなのかもしれない。
俺のイチオシのトムヤム・スープの食べ方は「トムヤム雑炊」である。鍋の後の雑炊ではないが、トムヤム・スープにタイ米のご飯を入れて少し煮るだけで、とてもおいしい雑炊になる。
ところが、このトムヤム雑炊は飲食店ではほとんど見かけない。ダシという概念がないからか、おかゆをトムヤムでつくるとは想像もつかないらしく、注文しても通じないことも多い。麺類にはトムヤム・スープがあるのだから、もっと一般的になってもいいと思うのだが……。
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