【タイの屋台飯と現実と俺が思うことと】 第3回 タイ人が焼くとこうなる、ガイヤーンの魅力
国籍問わず人気があるタイ料理の一つに挙げたいのは「ガイヤーン」だ。シンプルに鶏を焼いただけで、日本語では「タイ式ヤキトリ」などと訳される。タイは鶏がおいしい国で知られる。俺も初めてのタイでは、首都バンコクのカオサン通りの屋台で売られる、1串で高くても10バーツ(当時約25円)のガイヤーンにハマッたものだ。柔らかくてジューシーで、鶏肉の風味が詰まっていた。
今回はそんなガイヤーンを紹介していく。
タレはナンプラーとニンニクが基本
タイで暮らしていると、普通のタイ料理より東北部の料理である「イサーン料理」を食べる機会の方が多い。バンコクには特に東北人が多く出稼ぎに来ているし、最近は北部チェンマイや南部プーケットなど他県の街にもたくさんの東北人が移住していて、そこかしこにイサーン料理店が存在する。
イサーン料理店には大体、どこにもガイヤーンがある。イサーン料理店も品ぞろえ全てがイサーン料理ではないので、時に何がイサーン料理で、何がタイ料理か分からなくなってくることが在住者のあるある話でもある。
ガイヤーンはイサーン料理に分類したくなるが、実際にはタイ料理のくくりでいい。東北にももちろんあるが、北部、南部とどこにでもあるからだ。とにかく鶏肉を焼けばガイヤーンになる。串で売っているところもあれば、部位ごとに焼いている飲食店もあるし、専門店は1羽丸ごと焼く場合もある。1羽でも普通の店で高くても300バーツ(約900円)と考えると、ガイヤーンは安くて庶民向けの料理だ。
一般的なガイヤーンはとにかく作り方がシンプル。ナンプラー(魚醤)とニンニクをベースにしたタレに数分から24時間ほど漬けた鶏肉を焼く。もちろん、このシンプルな味つけと簡単な調理方法だからこそ、おいしい店とそうでない店の差が激しくなる。そして、この味付けが地方性にも影響する。有名なものから無名のものまで、さまざまなガイヤーンがいろいろな地域でつくられているのだ。
ガイヤーンのおいしさの秘訣は炭火焼きにある
バンコクでも食べられる地方ガイヤーン
地方性のあるガイヤーンで、特にバンコクでも食べられるおすすめが3種類ある。
まず東北地方の「ガイヤーン・カオスワングワーン」だ。コンケーン県のカオスワングワーン郡が発祥で、特徴は外側がカリッとしていて中が柔らかい。地鶏を使っていることが多いようだ。
地鶏を焼く「ガイヤーン・カオスワングワーン」
後述するが、地鶏はタイでも少ないので、けっこう珍しい。郊外になるが、商業施設「セントラル・バンナー」の裏に、このガイヤーン名を冠した有名店がある。
「ガイヤーン・バーンターン」は「セントラル・デパート」の飲食店フロアの持ち帰りコーナー(お総菜コーナー)でよく見かける。これは西部ラーチャブリー県バーンターン郡の発祥で、ウコンをすり込んでいて全体的に黄色い。ほんのりカレースパイスのような香りがしつつ、ニンニクやこしょうも効いている。
「ガイヤーン・バーンターン」はバンコク都内で徐々に増えてきているもよう
ガイヤーン専門店はモツ焼きもある。仕込み中の様子
俺が最も好きなのは、北部ペッチャブーン県ウィチェンブリー郡の「ガイヤーン・ウィチェンブリー」だ。バンコクのラチャダー・ピセーク通りの下町エリアに散見される。普通のガイヤーンと同じ店と、多数の香草をすり込んでいる店があるが、最大の特徴は「ナムチム(ソース)」が違う。
「ガイヤーン・ウィチェンブリー」は人気店。開店1時間で全て売り切れる
一般的なガイヤーンだと甘辛いナムチムをつけながら食べるが、ガイヤーン・ウィチェンブリーはタマリンドの甘い特製ナムチムや、ニンニクの酢漬けを使ったナムチムなど、ソースに違いがある。肉はいずれも柔らかくておいしい。
ガイヤーン・ウィチェンブリーのナムチムには、タマリンドを使う店が多い
ガイヤーン・ウィチェンブリーもジューシーな味わい
イチオシはパッポンの屋台!
ガイヤーンはバンコク発祥もある。一番有名なのは「ガイヤーン・ジラパン」だ。都内プラカノン発祥というイスラム料理系のヤキトリになる。スパイスなどが入った黄色いヨーグルト状のタレをつけながら焼くのでやや甘め。バンコクではラマ9世通りに1軒、有名店がある。
「ガイヤーン・ジラパン」はバンコク発祥
ガイヤーン・ジラパンはやや甘め。スパイスに癖はなく、誰にでも好かれる味わい
ごく普通のガイヤーンだが、「シリチャイ・ガイヤーン」もよく知られる。今はラチャダー通りとラートプラオ通りの交差点近くにあるが、以前は服飾市場「プラトゥーナーム」に近いマッカサンにあった。今はエアポート・レール・リンクの「ラーチャプラロップ駅」があるが、そこの踏切の掘っ立て小屋で営業していた有名店だ。
「シリチャイ・ガイヤーン」は移転してもジューシーさは変わらずおいしかった
ガイヤーンとしてはオーソドックスな漬けダレで焼いていると見られるが、創業70年以上の歴史があり、20分以上かけて焼かれた肉はジューシーで最高の逸品だった。
ただ、俺的にバンコク・ガイヤーンのおすすめ店は実はそこではない。シーロム通りのパッポン2通り入口に昼過ぎから夕方まで立つ屋台「ラーン・パーボー」だ。
ラーン・パーボーは「ボーおばさんの店」という意味になるが、実は本来は店名がなく、無理やり聞き出して合意してもらった店名なので、一般には通じないと思う。タイでは店名のない店が多い。税金を納めていないので、名前なんか不要なのでしょう……。
パッポン2のオーソドックスだが最高においしいガイヤーン
このパッポン2のガイヤーン店は屋台規制などの関係で、もしかしたらそのうち消えてなくなる恐れもある。実際、かつてはゴーゴーバーが始まる時間くらいまでは営業していたが、今は陽が沈むころには閉まってしまう。また、席はなくて持ち帰り専用のガイヤーン専門店になる。それでも10~50バーツ(約30~150円)程度の料金設定なので、おやつとして食べるのにも向く。
とにかく、どの部位も柔らかくて、ジューシーで味が濃くて、昔ながらのガイヤーンといった味わいで素晴らしい。俺が初めてタイに来た時からあったので、少なくとも20年以上、同じ場所で売り続けている。
天気が悪いと食べられないガイヤーン
最近のタイは近代化されて、東南アジア特有の二度見してしまうような爆笑ビックリシーンがだいぶ減ってしまった。それでも地方に行けば、多少はそんなヘンテコがまだ残っている。その一つとして、天候に左右されるガイヤーンを紹介したい。
西部ペッブリー県にある「シラーさんの太陽光線ガイヤーン」だ。勝手に命名しているが、日光を鏡で反射させて、その熱で鶏肉や豚肉を焼く店である。約800枚の鏡の角度を調整して1点に集中させると、たった15分程度で鶏肉が焼き上がる。
太陽光線ガイヤーンを焼くため、シラーさんが自分でつくった鏡800枚の装置
光を集めてガイヤーンをつくるシラーさん。日本のテレビにも出演したことがある
肉はじっくりと焼き上げられたというよりは、蒸し焼きにされたような感じで、食感はまるで生のように弾力がありつつ柔らかい。
鏡の珍しさだけでなく、鶏肉も分厚くて大きい点も評価できる
ここまでおいしいガイヤーンはないというほどだが、天気が悪いと焼くことができず、前日に焼いておいたものしか食べられない。
あるいは、季節によっては太陽の角度が悪く、焼ける時間が短いのですぐに売り切れてしまう。運が悪ければ食べられないという珍しいガイヤーンである。
切り分けた断面に肉の線維が見える。鏡焼きは肉にも優しいようだ
さらに言えば、1羽が巨大で200バーツ(約600円)とバンコクでは考えられないくらいに安いとはいえ、けっきょく、そこまで行かないと食べられない。バンコクからそこまでは車で2時間はかかるので、容易に行けないという面倒もある。近くに行ったら立ち寄りたい場所だ。もう一度言うが、運が悪ければ行ったところで食べることはできない……。
地方にはいろいろと面白いガイヤーンがある。東部の日本人が多い町シーラチャーには壺で蒸し焼きにするガイヤーンがあった。ただ、これはバンコクにもあるらしいので、太陽光線ガイヤーンよりは希少価値が薄い。
シーラチャーで人気の壺焼きガイヤーン
壺焼きという点はインドのタンドリーチキンに通じるものがある
地域限定過ぎるガイヤーン
前回のトムヤムの記事で、祖父がつくる軍鶏(しゃも)のトムヤム・スープが最高であると書いたが、軍鶏はつまり地鶏だ。祖父は700バーツくらいで1羽を買ってきていたようだが、先にも指摘したように、バンコクでは1羽で注文すると普通のタイ人が行く店で300バーツ程度であることが多い。ブロイラーで量産しているからこそ地鶏との値差がこれだけあるわけだが、けっきょくタイ国内で地鶏が流通しない理由はここにある。
まず、量産されないため手に入りにくい。地鶏を売りにしている店はタイ国内にたくさんあるが、どこも特殊なルートを持ち、農家と特約している。いずれにしても、地鶏は育てるのに時間がかかるため、安く出荷することは難しい。そうなると、一般的なガイヤーン店で地鶏を使うと原価が上がって客が買える値段設定にできないため、「ブロイラーを使うしかない」と、あるガイヤーン屋台の店主は言っていた。
地鶏とブロイラーの違いは、味わいや食感だ。やはり天然の肉は噛むほどに鶏の味がしみ出てくる感じがする。ただ、筋肉質なため、人によっては食感が硬いと思うかもしれない。もしバンコクでタイの地鶏が食べたければ、先のガイヤーン・カオスワングワーンの店、特にバンナーの店なら確実にありつける。
あるいは、タイ料理ではないが、日本料理店の「黒田」(所在地はエカマイなど数か所)も自社農園で育てた地鶏を使っている。
「黒田」の自社農場で飼われる地鶏。飼育環境の良さはタイ最高峰とされる
妻の地元の幻ガイヤーン
幻のガイヤーンが俺の妻の地元にあった。前回のトムヤムも諸事情で幻の逸品と呼んだが、このガイヤーンは単にここでしか食べられないという事情である。東北部ナコンラチャシマー(コラート)県ホワイタレーン郡にある「ガイヤーン・ホワイタレーン」だ。
「ガイヤーン・ホワイタレーン」を焼いている地元の若者
何が幻かというと、国鉄駅「ホワイタレーン駅」前にあり、3軒しか営業していない。特殊なタレを使うわけでもない。しかも、地鶏でもない。強いて言えば、食べる時にナムチムを使わないくらい。
そんな普通のガイヤーンが駅周辺の村人から大絶賛されているのだが、隣村でさえその名前は知られていない。あくまでもホワイタレーンの人が喜んでいるに過ぎない。よくよく考えてみれば、その周辺にガイヤーン専門店がそれまでなかった。少なくとも初めて行った13年くらい前はなかった。単にこれまでなかった店ができたことで、都合よく人気になっているに過ぎない気もする。
ただ、肉質は確かにいい。ブロイラーと見られるが、生産者と消費者の距離感がバンコクより近い。タイは全般的に流通経路が短いので食材が安いし、おいしいという事情がある。それがホワイタレーンはバンコク以上に近いので、食材自体はすごくいいのかと思う。
ガイヤーンは場所や店によって味が違う。そういう意味では日本とタイ、都心と田舎を結びつける一品なのではないかとさえ思う。まあ、そんな難しいことを考えずとも、ガイヤーンはうまい。タイの鶏肉の魅力を味わい尽くすなら、ガイヤーン一択である。
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