第10回 タイ人レディーボーイをまさかのナンパ、沖縄北谷町で【アジアンナイトクルージング】
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沖縄旅行3日目。前夜に米軍や米兵をめぐり、国頭郡金武町(くにがみぐんきんちょう)や沖縄市で緊張感のある取材を強行し、疲れはたまっていたはずだが、酒をそんなに飲んでいない上、取材時特有のアドレナリンが出ていたのだろう。午前中に元気良く目覚めた。お世話になっている沖縄社会で暗躍する友人、かんじゅん氏にさっそくLINEメッセージを送った。

「おはようございます。何か食べに行きませんか?」

「ステーキはいかがですか?」

「おー、いいですね!」

沖縄は言わずもがな、米国文化が根付いており、レベルの高いステーキハウスも多い。今日は沖縄最終日。一発決めなければならない。戦(いくさ)の前は肉と決まっている。私も米兵を見習い、ステーキを食らおうではないか!

かんじゅん氏は宜野湾市のステーキ店「マイハウス」に案内してくれた。内外装はけっしてきれいとは言えない。むしろボロいのだが、独特の渋さがある。個人的には、こういう飲食店の方が好きだ。

店内に入ると、米国人ラッパー、エミネムなどのヒップホップミュージックが爆音で流れている。ラッパー然とした客は昼間からノリノリで、ビートに合わせて体を揺らしながらステーキを注文。米国音楽といえば、やはりヒップホップであり、沖縄でも流行らないわけがないのだ。この雰囲気、最高じゃないか!

われわれは、ステーキ400グラムをそれぞれ注文。ライスとサラダが付いて1500円で、ボリュームもはんぱではない。こってりとした英国製「A1ソース」をつけるのが沖縄スタイル。食いしん坊の私も、完食するには多少の気合が必要だった。

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「マイハウス」の店内。年季が入っており、渋い魅力がある

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ステーキ400グラム、焼き加減はミディアム。バターとともに大量のすりおろしにんにくがのっている

マツキヨでスーパーモデルに遭遇!?

ステーキランチの後、中頭郡北谷町(なかがみぐんちゃたんちょう)の商業施設「ハンビータウン」に向かった。母親への土産として、沖縄特産「かりゆしウェア」を購入する目的があったのである。現地に到着し、1階のドラッグストア「マツモトキヨシ」の前をブラブラしていると、かんじゅん氏が突如声を上げた。

「おー、マツキヨにセクシーな外人モデルがいますよ!」

彼が指差す先には、確かにモデルのようなスタイル抜群の外国人がいるが、長年の経験により、瞬間的に判別できた。

「あー、あれはほぼ間違いなくタイのレディーボーイ(LB、ニューハーフ)ですよ」

「マジですか!? 女のスーパーモデルかと思いましたけど、きれいなので、タイ語でナンパしてもらえませんか」

私は「勘弁してほしいな……」と思ったが、三流とはいえプロライターを名乗っている以上、記事の「ネタ」を積極的につくる責務がある。ボケーッと消極的に旅していても、面白いネタは降ってこないのである。

「分かりました。ナンパしてみましょう……」

よく見ると3人組だったが、ほかの2人は大したことはない。マツキヨに進入し、狙いを定めたデルモを尾行、ナンパのタイミングを窺う。沖縄の片田舎のマツキヨでオカマとみられる外人の後をつける挙動不審な日本人オヤジ……客観視すると、完全にアウトの変質者ではあるが、覚悟を決めて話しかけた。

「サ、サ、サワディークラップ、コンタイチャイマイクラップ(こんにちは、タイ人ですか?)」

「チャイカ―(そうです)」

野太い声が返ってくる。完全にアウト、いや男性である。タイ語で少し会話してみると、格安航空会社(LCC)ピーチ航空を利用し、タイの空の玄関口スワンナプーム国際空港からひとっ飛び、沖縄に観光旅行にやって来たと明かしてくれた。

私はその後、「キミは美しい」などと彼女、いや彼を褒めちぎっておだてまくり、かんじゅん氏と彼のツーショット写真を撮影し、かんじゅん氏ともどもLINEを交換して別れた。

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ナンパの舞台となった「ハンビータウン」のマツモトキヨシ

売春婦と判明しコンドに潜入!

かんじゅん氏の実家に戻った後、時間が空いたこともあり、ナンパした彼にあいさつがてらLINEメッセージを送ってみることにした。

「さっきはありがとう。私は東京の近くに住んでるので、来る機会があれば連絡ください。自分もバンコクに行った時は連絡します」

「メッセージありがとう。今日は話しかけてくれてうれしかったわ」

メッセージのやり取りを通じ、聞き込みをしたところ、彼の名前はピンキー(29)。北部カンペンペット県出身で、現在はバンコクに住んでおり、タイ人観光客向けの査証(ビザ)取得代行などを手掛ける旅行代理店で働いているという。ファッションショーなどモデルのアルバイトもしているそうで、LINEにアップロードしている動画からも確認できる。LBとしてはなかなかの上玉である。自己紹介が一通り済むと、彼が本性を見せ始める。

「東京に行く機会は当分なさそうだけど、今なら一人だし時間あるわよ」

長年の経験から悟った。彼は堅気の仕事をしてはいるものの、売春に手を染めているようだ。

「それは今からキミの部屋に遊びに行ってもいいってことかな?」

「うん、来てもいいけど、“ノーフリーセ●クス”よ」

このメッセージの直後、エロいヌード写真まで送りつけてきた。はい、出ました。売春婦確定!

「とてもセクシーだけど、キミはまだ手術していないの?」

「豊胸手術はしたけど、下はまだ付いているわよ」

「そうなんだ……ノーフリーセ●クスなのは分かったけど、いったいいくらほしいんだい?」

「2万円……」

「高すぎるよ。自分はこう見えてもバンコクに10年以上住んでたから相場くらい知っているよ」

「分かったわ。1万5000円……」

「だから高いって!」

その後も交渉を続け、1万円まで下がった。それでもまだ全然高いのだが、物価の違いもあるし、これ以上は無理と判断し約定。一期一会――LBに特別な興味があるわけではないが、「沖縄でタイ人LB」という千載一遇のチャンスを逃すわけにはいかないと思い、対決を決意した。

別の部屋にいるかんじゅん氏に状況をざっくり説明すると驚かれたが、ピンキーが滞在する北谷のコンドミニアム「ビーチサイドコンドミニアム」まで車で送ってくれることになった。

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北谷のコンドへと急ぐ車内から。トゥクトゥク(3輪自動車)も走っている

交通渋滞に巻き込まれたものの、スマートフォンのアプリ「グーグルマップ」を活用し、なんとかコンドに到着。ピンキーの部屋に潜入し、濃厚なノーフリーセ●クスをぶちかました。その後は、駐車場で待機するかんじゅん氏も含め、男3人で居酒屋に行き、夕食をともにした……。

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ピンキーが滞在していた「ビーチサイドコンドミニアム」

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居酒屋にご満悦のピンキー。モデル活動も行っており、スタイルは良い

これ以上の詳細を書くのはあまりにも生々しいので、11月8日夜にゲスト出演するトークイベント「バンコクアソビナイト FOR MEN」で、時間が許す限り話す見通し。チケットはまだ若干の余裕があるそうなので、顛末(てんまつ)が気になる人にはぜひ遊びに来てもらいたい。(沖縄編終わり、新羽七助)

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