【タイの屋台飯と現実と俺が思うことと】第22回  南部の最強激辛料理、ゲーンクアグラドゥックムー
ゲーン・クア・グラドゥックムーは見た目は普通のカレーだが……

タイ料理というのは必ずしも辛いわけではないし、全てに「パクチー」が入っているわけでもない。しかし、日本人にその2つの要素が注目されるのは、やはりそれがタイ料理の魅力の1つだからだ。

料理は文化である。だからこそ、その地で食べるのが一番おいしい。水や食材のほか、気候なども関係してくるからだ。タイ料理にパクチーが使われるのには、ちゃんとした理由がある。そして、唐辛子などを使って辛くすることにも立派なワケが存在する。

やはり毎日暑いと身体の調子が良くなくなる。熱は自然と体力を奪っていくからだ。そんな疲れた身体を活性化させるには食べることが欠かせない。そして、唐辛子の辛さが胃を元気にさせる。

そんな辛いタイ料理の中で、最も辛い料理は何だろうか。俺自身の経験では今回紹介する骨付き豚肉のカレーがそれになるのではないかと思っている。

南部料理は辛さの質がほかと違う

首都バンコクでタイ料理を食べる時、自然と口にしているのがイサーン(東北部)料理だ。長く、そして漠然と食べていると、タイ料理とイサーン料理の違いが曖昧(あいまい)になってきてしまう。しかし、タイ料理という大きなくくりの中では、ほかにも北部や南部の料理があることも忘れてはならない。

南部ハートヤイ(ハジャイ)。カラフルなタウンハウスは南部というイメージがある

南部ハートヤイ(ハジャイ)。カラフルなタウンハウスは南部というイメージがある

北部料理と南部料理はバンコクではやや珍しい部類に入る。高架鉄道(BTS)プロンポン駅やトンロー駅周辺にはこれらを提供する料理店もあるが、一般的なタイ料理店では扱っていないことも多い。

北部料理が好きな人の中には、タイ料理で一番辛いのは北部料理だという人もいる。一方で、南部料理という人もいる。確かに双方の言い分にうなずける理由はあるが、俺から見ると辛さの質が違うような気がする。

イサーンや北部の料理の辛さはどちらかというと、唐辛子単体が要因であるのに対し、南部料理は「スパイス」の効果が大きいと感じる。インド料理的な香辛料の辛さだ。そこに唐辛子も加わり、北部や東北部の辛さとは違っているような気がする。

そんな南部料理の屋台が俺の自宅近辺にあってよく食べるのだが、その中でも「ゲーン・クア・グラドゥックムー」はタイ料理の中で最も辛いのではないかと思う。

ゲーン・クア・グラドゥックムーは見た目は普通のカレーだが……

ゲーン・クア・グラドゥックムーは、見た目は普通のカレーだが……

「ゲーン」とはカレーのような汁物、あるいは「ナムプリック」というタイ風味噌をスープの素にして使うスープや炒めものである。在住日本人らが「ぶっかけ飯」などと呼ぶ、屋台や食堂でバットに惣菜を並べてご飯にかけてくれるものもゲーンだ。

ゲーン・クア・グラドゥックムーのテイクアウトは袋に入れてくれる

ゲーン・クア・グラドゥックムーのテイクアウトは袋に入れてくれる

「グラドゥックムー」は豚の骨で、骨付きの豚肉を指すし、「シークロン」すなわちスペアリブを意味する場合もある。

「クア」はタイ人に聞くと、炒めるを指す「パット」と同じ意味という人もいるが、実際には水分を少なめに炒めること。つまり「煎る」と訳した方が良さそうだ。イサーン料理の肉サラダ「ラープ」の苦みは米を「クア」したものを混ぜている。だからクア=煎るであると思う。

ちょっと「クア」したような肉が載るイスラム料理。なぜか米が水色

ちょっと「クア」したような肉が載るイスラム料理。なぜかコメが水色

ムスリムの女の子の顔だけ出ている姿はけっこうかわいい

ムスリムの女の子の顔だけ出ている姿はけっこうかわいい

しかし、クイッティアオ(米粉麺)の太麺を鶏肉とともに塩炒めにする「クアガイ」もある。これは確かに水分少なめだが、煎るというよりは炒めている。

ラープの兄弟分である肉サラダ「ナムトック」にも米のクアが入っている

ラープの兄弟分である肉サラダ「ナムトック」にもコメのクアが入っている

今回のゲーン・クア・グラドゥックムーもナムプリックと豚肉を炒める段階では水分少なめだが、最終的には炒めものとカレーの中間になる。そのため、この料理は南部以外では「パット・ゲーン・グラドゥックムー」あるいは「パット・プリック・グラドゥックムー」と呼ぶ場合もある。

地獄の辛さだがまた食べたくなる不思議

ゲーン・クア・グラドゥックムーはナムプリックのほか、「バイマックルー」(コブミカンの葉)の千切りや唐辛子を入れ、本格的な南部の店では前回紹介した「ガピ」(南部ではカーイと呼ぶ)と呼ばれる小エビを発酵させた調味料を少々入れる。

唐辛子は生の実だけでなく、クイッティアオなどで使う乾燥して砕いたものも使う。これだけでも異常に辛いことが分かるだろう。

ただでさえ辛いのに、しれっと生の唐辛子も入っている

ただでさえ辛いのに、しれっと生の唐辛子も入っている

ナムプリックは特に南部のものが良いそうで、ただのナムプリックではなく「ナムプリック・タイ」(南部のナムプリック)を用意する。一説ではナコンシータマラート県のナムプリック・タイが良いのだとか。

普通のナムプリックとナムプリック・タイの違いについて、大きなポイントは「カミン」(ウコン)が入っているかいないかだという。そのため、ナムプリック・タイを使うとゲーンは黄色っぽくなり、より日本人がイメージするカレーのようになる。

インドカレーもゲーン・クア・グラドゥックムーと比べると甘いスープである

インドカレーもゲーン・クア・グラドゥックムーと比べると甘いスープである

しかし、俺が思うにカミンだけが違いなわけがない。というのは、日本のカレー、あるいは南部の人気カレー「マッサマン」と比較しても、尋常じゃない辛さだからだ。唐辛子だけでなく、スパイスの辛さも強いのだ。ほかにもたくさんのスパイスが投入されているに違いない。

スープにはやはり、たくさんのスパイスが入っているように見える

スープにはやはり、たくさんのスパイスが入っているように見える

同じ南部のカレーとは思えないほど甘味があるのが「マッサマン」

同じ南部のカレーとは思えないほど甘味があるのが「マッサマン」

先に辛みは胃を活性化させると書いたが、実際のゲーン・クア・グラドゥックムーは活性化を通り過ぎて胃を壊すレベルである。これが近所にあるものだから、妻は俺の朝食にこれを買ってきたりする。

いつも朝食を買う南部料理のゲーン屋台

いつも朝食を買う南部料理のゲーン屋台

買ってきた本人(イサーン人)はスパイス系の辛さが苦手で食べない。ゲーン・クア・グラドゥックムーは朝イチの空腹にはかなりきついし、舌が痛くなる。毎回「ああああ!」と叫びながら食べる。

ちなみに、俺は子どもの時から辛いものが大好きで、小さい時からピザには真っ赤になるまでタバスコをかけるタイプだった。また、日本にあるちょっとやそっとの辛さ自慢の料理はなんとも思わないほど、辛い料理を好む。そんな俺でさえもきつい一品だ。

タイに来たばかりのころ、辛い料理と一緒に白米を食べるのは分かるが、食事時にいい大人がコーラなど甘い飲みものを飲んでいることに衝撃を受けた。でも、ゲーン・クア・グラドゥックムーを食べると、その意味が分かる。甘いドリンクで中和しないといけない。それくらい辛い。興味があればぜひお試しあれ。

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この記事の作者

高田胤臣
高田胤臣
1977年東京都出身。98年に初訪タイ後、2002年から在住のライター。移住当初は死体へのタッチに執念を燃やしていたが、現在は心霊ライターになるべく、恐怖スポット探しに躍起。タイ語会話と読み書きも一応可。
ウェブサイト:http://nature-neneam.boo.jp/
ツイッター:https://twitter.com/NatureNENEAM
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