非社交的な性格で知られる新羽七助。自分から誰かに連絡することはほぼなく、交際範囲も狭いが、そんな私を気にかけてくれる知人もわずかながらいる。大学の先輩２人が日本への本帰国を祝し、食事会を開催してくれる見通しになった。

私と先輩１人は神奈川県湘南地区に在住。もう１人は田園都市線沿線に住んでおり、同線と小田急江ノ島線が乗り入れる大和市の中央林間駅に集まることになった。先輩は２人ともバンコク駐在経験があり、タイ料理もお好き。同駅から徒歩５分ほどの「チェンマイ」というタイ料理店で宴を開くことが決まった。

中央林間駅から徒歩約５分のタイ料理店「チェンマイ」

マッサージ店も併設するチェンマイに入店すると、商売っ気が感じられず、やる気もなさそうな初老男性が迎えてくれた。おいおい、このおじさん大丈夫か？　という雰囲気なのだが、実際には彼の妻であるしっかり者のタイ人女性が店を切り盛りしている。まあ、よくあるパターンである。

奥さんはチェンマイ近くの北部プレー県出身。知る人ぞ知る美人の産地だが、「プレー」という店名にしても分かってくれる日本人客がほとんどいないので、「チェンマイ」にしたのだろうと推測。

とりあえず定番のコームーヤーン（豚喉肉の炙り焼き）やラープムー（豚ひき肉サラダ）などを注文。価格は各900円となかなか高いが、奥さんの料理の腕は確かで、日本で食べるタイ料理としては高水準だ。

ラープムーは900円。高いが味は本格的

才色兼備のタイ人ＪＤと乾杯

当日は、タイ人大学生サークルの宴会が行われていたほか、奥さんの友だちのタイ人女性客らもいて、店内は非常に賑やかだった。酔っ払ったタイ人女性客のおばちゃんがいつの間にか、われわれのテーブルに乱入。タイ語を話すわれわれに親近感を覚えたのかもしれない。話を聞いてみると、日本人夫とは既に離婚し、大和市内のパン屋で働きながら、息子を育てているらしい。なかなかの苦労人とみた。

ビールに飽きたわれわれは、スコッチウイスキー「シーバスリーガル」のボトルを投入。アルコールの力を借りて悪乗りするのは、新羽の得意技である。おばちゃんに対し、ダメもとで、宴会中のタイ人女子大生（ＪＤ）と話したいと切り出すと、「誰でも好きなコを呼んであげる」と言うではないか！　実に話の分かるおばちゃんである。

投入したシーバスはあっという間に空に

お言葉に甘え、一番ナーラック（かわいい）な女性を指名すると、当たり前のようにわれわれのテーブルに来てくれた。日本人ＪＤだとこうはいかない。さっそく濃いめのシーバスソーダをつくってもてなし、事情聴取開始。

意外にも東北部（イサーン）コンケン県の出身という。そこらへんのタイ人とは違う知的な雰囲気を漂わせているが、それもそのはず。現在は理系の超名門である東京●業大学に留学中で、今夜は交友関係を広げるため、サークルの宴会に参加しているのだとか。

新羽の事情聴取を受けるタイ人ＪＤ。ナーラック

才色兼備のタイ人ＪＤと交流し、気分を良くしたわれわれオヤジ軍団は、食べ切れないほどの料理を追加注文し、留学生やおばちゃんらに大盤振る舞い。大衆的なタイ料理屋で飲み食いしただけなのに、会計は軽く３万円を超えてしまった……。

調べてみると、大和市には、タイ人を含むアジア人が数多く住んでいるという。同市と隣の横浜市にまたがる「いちょう団地」は知る人ぞ知る“インターナショナル公営住宅”とのこと。今度、取材してみたい。（新羽）