【嵐よういち・海外裏ロード】インドネシア、ヌサ・トゥンガラ諸島旅行記 中編
湖は美しかった

パジャワ、地獄のような移動

この男がモーガンだ

翌朝、ガイドの“モーガン”がやってきた。着くなりこう言う。

「前金を半分、今払ってくれ」
「昨日、手付金を払っただろ?」
「会社のボスに金を払い込まないといけないんだよ」

だったら先に言ってほしいものだが、この男は最初から最後までこんな調子であった。それに30年ぐらいフローレス島のガイドをやっているらしいが、英語がヘタで、理解できないこともたくさんある。

俺たちの車は9時過ぎにホテルを出発してパジャワという街に向かう。最初こそ舗装された道をスイスイと進んでいたが、途中から殺人的なデコボコ、ガタガタ、クネクネ道に入っていった。道が全く舗装されていないどころか、ところどころに穴が開いているし、どうしようもない道だ。そこをモーガンは必死に運転する。10年以上前に知り合いの旅人がこのルートをローカルバスで走ったことがあるが、旅慣れている彼も車酔いして絶望感に打ちひしがれ、車内にいた猫も酔って吐いていたようである。時たますれ違うローカルバスはスローモーションのようにゆっくりと道を進んでいる。高さがある分、俺の乗っている車よりも揺れは酷いらしく、ここからでも上下左右にユラユラ揺れているのがわかる。転倒しないか心配になる。

湖沿いの道も全く舗装されておらず、防護壁なんてもちろんないので運転を間違えたら湖に落ちてしまう。この道はドライバーの間でも評判が最悪のようで、運転する人は大変であろう。ローカルバスを使わずにドライバーを雇って良かったと思う。

気温はどんどん上昇していくが、ゆっくり走っているので風が全然入ってこない。暑くて仕方ない。それなのに、モーガンはクーラーをつけようともしない。俺が抗議した時だけつけるのだが、少し車がスピードを出すとすぐに止めて窓を開ける。非常に不快で迷惑な話だ。最初は節約しているのだと思ったのだが、話し込んでいるうちに彼は肺をやられ、クーラーをつけると胸の調子がオカシクなると説明してくれた。それは嘘ではなさそうなので俺はそれから文句を言うのをやめた。

パジャワの近くにきてガタ人の伝統的な村を1か所見学し、パジャワの街に到着した時にはもう既に暗くなってきた。標高が高いので寒く、レストランでクソまずい晩飯を食べてその日は早めにホテルで就寝した。

モニ、地獄のような道

翌朝、出発予定の8時にロビーに行くとモーガンがいて、相談事があるという。

「他の宿に泊まっている欧米の女のコ2人が困っている。ローカルバスに乗ってモニに移動しようとバスターミナルに行ったら満席で乗れなくて移動手段がなくなった。車をチャーターするには金がない。だから安い金で2人を乗せてあげようと思うのだがどうだろう?」

このような時は助け合うのが旅人の常識である。それに若い欧米人の女と聞いて二つ返事でOKした。

車は走り始める。昨夜は暗くて分からなかったが、高原の街らしくのどかで、避暑地にはもってこいかもしれない。

5分後、小さなホテルの前に車が停まり、白人の女のコが乗り込んできた。二人とも20歳くらいだ。1人はオランダ人で愛想が良く、自己紹介をしてきた。もう1人はタンクトップから巨乳がハミでそうなスペイン人。モーガンと2人よりも車中は楽しそうだ。

車は走り出すとすぐにベナ村というガダ人の伝統的な村に到着した。

asia-886020_960_720

ここはフローレス島の観光の目玉の一つで、もし、日本から「フローレス観光ツアー」なるものがあったら100%行くはずである。女のコ2人は昨日ここを観光したので車の近くで待っているようだ。なんだか待たせるようで悪い気はするが、元々、俺が高い金でチャーターしたもので、彼女たちは安い金で移動できている、つまり俺のおかげで助かっているのでそんなことは気にしない。ここは伝統家屋に囲まれた広場に、男性の祖先を象徴するガッフと、女性の祖先の象徴のバーガという祭壇がある。村はなかなか見ごたえがあるが、モーガンはほとんど説明してくれないし、俺が尋ねれば答えてくれるが英語がヘタでよく言っていることが分からない。村人は観光客馴れをしていて笑顔で接してくれるが、なんだかそれもシラケる。すぐに飽きてきたので、30分くらいで村を後にした。それにしても村を歩いても観光客は俺だけだし、島を訪れる人もかなり少ないのが分かる。

車は走り出したが30分もするとまたもや悪路が始まった。モーガンは大変そうだが、俺も頭や顔をぶつけて寝られもしない。後部座席に乗っている女の子たちも辛そうである。途中、雨が降ってきて開けていた窓を閉める。さすがに暑いのでこの時はモーガンもクーラーをつける。非常に心地が良い。雨が止み、外を見ると野生の水牛の群れが、泥だらけの水溜りに入り気持ち良さそうにしている。俺が近づいて写真を撮ると警戒心丸出しの表情を浮かべながら「ウ~ウ~」と唸っている。途中、モーガンとオランダ人がトイレに行き、車内は俺とスペイン女だけになった。彼女はスマートフォンの画面を見ながら心配そうな顔をして言う。

「今、地図を見ると、私たちのいる場所はここ。まだ半分も行っていない。こんな悪路でモニに夕方までに着けるのかしら。どう思う?」

そんなことよりも、彼女のタンクトップからはみ出た巨乳と、ピンク色の大きな乳首に自然と目がいき、「スマホって便利だね」なんて馬鹿な答えを返す。

モーガンとオランダ女が戻り、車のエンジンを入れるとオランダ女が訴える様に言った。

「まだ、こんな悪路ばかり続くの?」

俺が答える。

「まだ半分以上の悪路が続くよ。昨日、同じ道を通っているからね。マジで辛いよ」

2人の女は「勘弁してよ、きつすぎるわよ」と泣きそうな顔になる。それにしてもこの道路はどうにかならないものか。

モニの観光

モニはマウメレから行く場合は、舗装してある道を3時間走れば到着してしまう便利な観光地である。その街には暗くなった夕方6時に到着した。外は肌寒い。宿に着くと女のコ2人はグッタリしてベッドに横たわった。

俺とモーガンは2人で天然温泉に入りに行くことにした。温泉に着いたと思ったら、車の中で奴と金のことでモメる。もうモーガンのことは信用するのはやめた。この温泉はタダなのだが、「外国人は金を高く取られるので俺が払っておく。だから金を先に預けろ」と終始こんな感じである。

奴の“旅人ノート”には日本人の感想などが書かれていた。どれもお世話になった感謝の言葉が並んでいる。こういうのを見せれば他の日本人が安心するのだ。最初のうちは俺に「終わったら、このノートに良いこと書いてね」なんて言っていたが、やはり最後は俺に何も言ってこなかった。俺がとんでもない悪口でも書くと警戒したのだろう。それに初日には「マウメレに戻ったら私の家に来てくれ。ごちそうする。酒でも飲もう」なんてしつこく誘っていたが、最後の日は何も言ってこなかった。

温泉は男女別に別れている。日本の温泉のように素っ裸にはならず、基本的に下着か水着着用である。村人と話しながらの温泉……しっかりと浸かりたいのだが、お湯が足首までしかなく、流れてくるお湯に体をつけて洗ったり、って、これじゃあ温泉って言わないだろ! おまけに更衣室もなく、電気もないため、そこらへんに服を置いてほとんど見えない状態で入った。もう何も面白くなく、上がってタオルで体を拭いていたらいつの間にかタオルに泥が付着していたらしく、入る前よりも汚くなるし最悪であった。

翌朝、3時半に起床。4時15分に宿を発った。これからみなで早朝のクリ・ムトゥ山に登り、カルデラ湖でのサンライズを見るのだ。モニ観光のハイライトである。車は1時間弱、暗い山道を走る。他のツアー客やバイクタクシーも数珠つなぎのように続く。

クリ・ムトゥ山には入園料が必要で、女のコ2人はモーガンに金を渡している。俺がこいつにキレていたのでほとんど無視をして怒った表情をしていたからなのか、「ヨウイチはここの金は払わなくていいよ」なんてヌカしてくる。

クリ・ムトゥ山の麓(ふもと)に着いたがまだ真っ暗で、懐中電灯を使いながら山道を進む。20分くらい歩いた頃、少し明るくなってきた。観光客は白人とジャワ島やバリ島からのインドネシア人が多い。展望台に到着してサンライズを眺める。そこにはお土産やコーヒー、水、カップラーメンを売るおばちゃんもいるではないか。いったい、どこからいつやって来たのか。尋ねてみると、「毎日5時前には下の村からやってくる」と答えた。

この展望台から眺める3つのカルデラ湖はとても幻想的で美しい。

湖は美しかった

早起きして山道を歩いてきたかいがあった。火口にできた湖は鉱物の含有量の違いから3つとも色が違う。東側の2つの湖は乳白がかった青色と深い緑色で西の湖は黒色である。みなそれぞれ記念撮影などをしている。標高が高いので意外と寒く、日もかなり上がってきたので俺は下山した。

店舗名
業種
エリア
電話番号
HP
  • オフィシャルHP
  • 動画ページへ
  • 体験レポートへ
店舗名
業種
エリア
電話番号
HP
  • オフィシャルHP
  • 動画ページへ
  • 体験レポートへ
店舗名
業種
エリア
電話番号
HP
  • オフィシャルHP
  • 動画ページへ
  • 体験レポートへ
店舗名
業種
エリア
電話番号
HP
  • オフィシャルHP
  • 動画ページへ
  • 体験レポートへ
店舗名
業種
エリア
電話番号
HP
  • オフィシャルHP
  • 動画ページへ
  • 体験レポートへ
名前
年齢
スリーサイズ
名前
年齢
スリーサイズ
名前
年齢
スリーサイズ
名前
年齢
スリーサイズ
名前
年齢
スリーサイズ

この記事の作者

嵐 よういち
嵐 よういち
旅行作家、旅行ジャーナリストをやっています。
代表作は、海外ブラックロード・シリーズ。
海外ブラックロードpodcastをクレイジー・ジャーニーで話題の丸山ゴンザレスと二人で週に1回配信しております。
嵐 よういちの記事一覧を見る

関連する記事

この記事の作者

嵐 よういち
嵐 よういち
旅行作家、旅行ジャーナリストをやっています。
代表作は、海外ブラックロード・シリーズ。
海外ブラックロードpodcastをクレイジー・ジャーニーで話題の丸山ゴンザレスと二人で週に1回配信しております。
嵐 よういちの記事一覧を見る

人気カテゴリー

アクセスランキング

ページTOPへ
ページTOPへ