【抱腹絶倒タイ人コック】 第11回 唐辛子テロリスト

夏になると、いろいろな場所で「エスニックフェア」「激辛特集」などと銘打ち、タイ料理をはじめとする辛い料理がもてはやされますが、僕の勤めていた会社でも、都内の大手百貨店と組み、エスニックフェアを開催したことがありました。
その時のタイ料理担当コックは、プリチャーとワンナという北部チェンライ出身の夫婦が選ばれたのですが、北部の年配の人は大概、辛い料理が大好きで、この2人も異常なくらい辛い料理が好き。2人がつくるまかない飯は、タイ料理に慣れているアルバイトらも敬遠するほどのものばかりでした。
エスニックフェア初日の朝の準備もひと段落したころ、百貨店担当者が、当店の売り子としてあてがわれた、かわいらしいミニスカート姿のアルバイト女子大生を連れて来て、僕らの前に突然やって来ました。
「●●です、よろしくお願いします!」とかわいい女の子にあいさつされ、「あっ、あっ、こちらこそよろしくお願いします!」と、あからさまに動揺する僕とプリチャーを尻目に「ハーイ」と女の子の目も見ず、適当なあいさつをする嫁のワンナ。
なんだよワンナ、その適当なあいさつはよ……と思いつつ、プリチャーを見ると、口が見事に曲がっているではないですか!
プリチャーという男はなぜか昔から、一生懸命になると口が曲がる習性があって、何度かテレビの料理番組に出たこともあるのですが、料理をつくるシーンは必ず口が曲がっているのを、僕は気付いていました。
「えっ、なんでプリチャーは口が曲がってんの?」と思うや否や、スタスタと隣の系列のシンガポールレストランのブースに向かい、生のイカを2杯手にし、戻ってきました。
プリチャーはなぜか、2杯の生イカの目の部分をけっこうな力でつかんでいて、目が完全につぶれている生イカを持って「イカ、タベマスカ?」と、女子大生の目の前に突き出したのです。
「い、いや、今お腹いっぱいなので大丈夫です……ありがとうございます」と完全にドン引きして断る女子大生に満面の笑みで応え、まな板に向かってイカを調理し始めるプリチャー……。
しばらくすると、僕の横から「ジャー」とフライパンで豪快に炒めものをする音がしたので、プリチャーを見ると、口をひん曲げてイカを炒めていました。
すると、プリチャーの周りにいた僕と女子大生がゲホゲホと咳が止まらなくなり、みるみるうちに催事場にいる人全員が激しく咳き込みだし、催事場全体がパニック状態に陥ってしまったのです。
プリチャーが炒めた「イカのパットガパオ(バジル炒め)」に投入された大量の唐辛子の成分が散布されたせいだと分かった僕は、激しく咳き込みながらも「皆さん、唐辛子です、大丈夫です! ゲホゲホゲホ……唐辛子ですから!」と大声で叫んでパニックを必死に沈静化させようとしました。その横でまったく咳き込むことなく、口をひん曲げながらイカを炒め続けるプリチャー……。
百貨店の社員が催事場を慌てて駆けずり回り、激しく咳き込むお客さんに対応し始めたころ、これはヤバいと思ったワンナが慌ててプリチャーに駆け寄り、タイ語で激しく叱咤。調理をやめさせた上で、僕に向かって、ひきつりながらも「もう大丈夫」と言わんばかりにウィンクをしてきました。
僕は、血相を変えて駆け寄って来た百貨店社員に対し、「唐辛子の成分が飛散しただけなので大丈夫です。人が死んだりしませんから。すいません、本当すいません!」と必死に謝罪。プリチャーはなんとその横で、でき上がったイカ料理を皿に盛り、女子大生に対し、「イカ タベマスカ?」と勧めたのです。
僕はこの時、プリチャーに対し、久しぶりに殺意を覚えたと同時に、タイの唐辛子って半端ねぇな……とその威力に驚きました。
タイ人とタイ料理をなめてはいけません。
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