第30回(最終回) 再びのチェンマイで原点に戻る【タイのいなかはおじさん天国】

実に悲しい。
30回に渡って連載してきたこのコラム、これにて終了、店じまいなのである。
もっともっと地方旅の面白さを啓蒙したいところだった。ネタもたくさん用意していたのだが、思うに任せないのが世の常、人の道。タイのオメコ旅も人生行路も、なかなか難儀なものなのだ。
最終回では、再びチェンマイを取り上げたい。実はついこの前、再訪したのである。外国人旅行者が年々増えていて、タイの田舎独特の風情にはやや欠けるものの、やはりバンコクとは違う時間が流れ、弛緩した空気と穏やかな人々には落ち着かされる。
ターペー門の前を流す赤いソンテウはチェンマイの象徴ともいえる
ナイト・アクティビティも豊富で、かつ外国人慣れしており、タイ地方デビューにはちょうどいい。ルーキーでも初戦を飾れる街であろう。
チェンマイの温泉?
いつものように北部名物のカレーラーメン・カオソーイで腹を満たした俺は、金玉をパンパンに漲らせて立ち上がった。しばらくオナ禁が続いていたのだ。日々刻々と生産されるザーメンは行き場をなくして精巣に渦巻き澱をなし、もはや女が横を通り過ぎるだけで欲情し、そよ風が吹いたって勃起しちまう暴発間際の危険水域。さあ、どこでハメよう散らせよう。まずは風呂から見てみるか。チェンマイにはいくつか温泉が湧きだしているのだ。
ブログなどで評判の良い「セレブリーズ」に行ってみれば、ひな段には20人ほどが居並ぶ。すかさず寄ってきたコンチアによれば、ラインナップは1600バーツと1900バーツだという。全体的に、バンコクのペッブリーレベルであろうか。40代と思しきババアもいるが、それなりに見れるメコもいるじゃないか。あのいやらしいボディコン1600バーツにしちゃコスパいいな……。
しかし、その横のロングドレスの人物に視線を移すと、明らかにうっすらとヒゲが生えているではないか。ここは自由の国、人権の国タイランド。ひな壇にいるからってヒゲNGというほど狭量でないことを俺は知っている。
しかし、しかしだ。今日の俺はメコを食いたい。サオつきのオカマちゃんと手コキしあう夜もあるにはあるが、今日ではなかろう。そう思うと隣のボディコンももしや……と疑心暗鬼にさせられてしまい、さんざん迷ったのだが店を出た。次。
タイのソープあるある
転戦してきたのは「サユリ」であった。タイのソープの中には恥ずかしいことに、日本の女の名前を店名にしたものがちらほらあるのだ。その昔タイにソープランドという業務形態を持ち込んだのは日本だという説が根強く、それにあやかっているのだ。吉原だか熊本だかのベテランソープ嬢が、手取り足取りオメコ取り、タイ娘にソープの技術を伝授したのだという。
どこまで本当かはわからないが、ともかく「サユリ」に入ってみると、1200~1500バーツのタマダー(普通)ゾーンには、ぽっちゃり太った30歳前後の小ブタちゃんが並んでいた。
うーん。速攻で回れ右しようと思ったのだが、ひな壇を凝視している連中のほうにそそられた。ずらりと並んだ変質者たちは、ファランに中国、インド系、そして当然我らが日本人のおじさんたちも何人かいる。
この店は外国人観光客相手に料金を上乗せすることで有名でもある。タクシーやトゥクトゥクの誘いに応じて連れられてきた客には、運転手のマージンを加算して請求するのだ。
ソープ「サユリ」はタクシーやトゥクトゥクに誘われて行くとマージンが上乗せされる
彼らは、自力で店までやってきた俺よりもはるかに高い料金を提示されているというわけだ。その額がいくらだかは知らないが、だいぶ悩んでいるようだ。これはいけない。
風俗遊びでは、そして旅では、なにより自主性を重んじなければならない。どの店に行きたいのか。どのメコとハメたいのか。それはタクシーが決めることではないし、応じてもいけない。チェンマイのような国際観光都市ならなおさらである。
見よ、世界各国からやってきたこの哀れな男たちを。彼らは地方風俗をナメた代償に、これからボッタクリ風呂を浴びるのだ。「ほぼ日刊ほいなめ新聞」の賢明なる読者諸氏はこうしたことのないよう、戦地には自らの情報とアシとでもって訪れてほしい。
その後いちおう2000バーツのモデルゾーンも視察してみたが、モデルというより整形ゾーンのほうが正しいのではないだろうか。そのパイオツ明らかに入れてるでしょ、と文句つけたくなる不自然な巨乳が3名。どう見たってキミその目切開しているよね、ってやつが2名。
まあ俺だってハゲを隠しているし整形くらい別にいいのだが、せっかくのオナ禁明けはベストの選択をしたい。だからつい優柔不断になる。結局俺は「サユリ」でも決められず、ほか数軒バイクで走り回ってカウパー液をにじませつつ回ってみたのだが、どうにもこうにもヒット1本が打てない。長い不調に入ったベテランのバッターの気持ちとはかくや、とも思ったが、そんなことを言っている場合ではない。
不振のときはやはり原点に立ち返って自らを見つめ直すべきであろう。メンダー大久保よ、お前の主戦場はどこだ、どこなのだ……答えはひとつしかなかった。
俺は誰になんと言われようと、バービアが好きなのだ
地方風俗ならではの飾らない陽気さ。オープンエアの心地よい風。気さくな家族的雰囲気。優しいババア。意外にいい女だっている。ついでにいえば安い。地方で飲みたくなったらバービアに限るのだ。
こういう気軽で、かつ親しみやすい店が日本にあるだろうか?
メコと気が合ったらハメるもよし、軽く乳を揉む程度に留めて明日への活力にするもよし、恋人気分で舌を絡ませたっていい。
そんなバービアがチェンマイで最も密集しているのは、ロイクロー通りだ。旅行者の行きかうターペー門からも5分ほどの距離である。通りに入ってみれば、毒々しいネオンをまきちらすバーが右に左に並び、女が手を振る、媚を売る。男に優越感と自信とを与えてくれる光景だ。
ロイクロー通りのバービアはどこも居心地がいい
どの店にしようか……そう悩む暇すらなかった。ひときわ賑やかなふたり組がキャーッと寄ってくると、俺の両腕をとって乳を押しつけながら店に連行するのである。密着した肢体から放たれるメスと香水の香り、女の肉の柔らかさ。抵抗もできず俺は拉致された。
「ちょんげーお!」
今回はこちらのおふたりを味見した。かなり積極的でスケベだった
相手が複数だからといったって奢ることをケチってはならない。1杯たかだか200バーツ以下であろう。彼女たちも外国人を相手にしているのである。友達と一緒に接客したほうが気楽だし、楽しいものなのだ。そしてバービアお約束の四目並べやジェンガも、人数が多いほうが盛り上がる。
「負けた人がテキーラ一気ね!」
バービアの遊びといえばジェンガだろう。やり慣れている嬢たちは強い
テーブルの上にジェンガの塔を積み上げて、左右からぴったり寄り添ってくるふたり。ミニスカから主張するダブル生足をもみしだきながらゲームに興じ、酒を煽る。チェンマイの街をなんだかんだと徘徊したが、落ち着くところに落ち着けた安心感に包まれる。
酔っ払ってきたのか、よくわからない行動を取るメコたち
イッキとか言ったって、そのテキーラを奢るのは俺なのだ。ワンゲームごとに課金されていくわけだが、そんなところでケチったって仕方がない。メコたちは金がほしいというよりも、酔いたいからこんなゲームを提案してきているのだ。
「あーん、またあたしの負けー」
ジェンガを瓦礫の山と化してしまった左メコが、ショットをクイッと飲み干すと、腕を絡めて甘えてきた。
「まおれぇお(酔っちゃった)」
すかさず唇を奪う。舌で応じてくる。お互いに息が荒い。歯と歯がぶつかる。
「あーん、ずるいー」
抗議する右メコともキッスを交わす。両腕でメコふたりを抱えて、右とキッス、左とキッス。そしておじさんの夢みんなの夢、3人で顔を突き合わせて唇を求め合う3Pキッスに及べば、とてつもない全能感が湧き上がってくる。汚い中年男の舌ベロを、ハタチそこそこの女子がふたりしてついばんでいるのである。
いまこのとき、俺より幸福な夜を過ごしている男はいるまい。なんといっても天下の表通りなのである。オープンエアなのである。白人のカップルや中国人の観光客も行き交うロイクロー通りで、軽蔑の視線を浴びながら絡める舌と舌。左右から乳をまさぐれば、メコどもは俺のチンポをシフトレバーのごとく握り締め、しこる。
毎度毎度の路上ペッティングに、いくぶん露出癖のある俺はどうしようもなく昂ぶってしまう。いくらなんでも、もう限界であった。
溜めに溜め、我慢を重ねた男汁。今夜はふたりに飲んでもらおう。俺たちは酔った足取りでチェンマイの旧市街を歩き、宿へと向かうのだった。
最後に
これにて、おしまい。
この連載、いくらかの誇張はあったものの、基本的にすべて実話であったことをお断りしておきたい。
そして読者の皆さまもまた、タイの小さな町や島に、ぜひ遊びに行ってほしいと思うのだ。ローカルな場所にこそ、本当のタイがある。英語が通じる場所にだけ行っているだけでは、タイの良さはなかなかわからない。そしてどんなイナカでだって、きっと優しいタイ娘が出迎えてくれるだろう。そんな出会いを探しに、旅立ってみてはどうだろうか。
チェンマイ郊外にある寺、ワット・プラタート・ドイカームにて。こうしてタイのイナカで寝て過ごす人生を送りたい
ご愛読ありがとうございました。
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