【タイの屋台飯と現実と俺が思うことと】第15回 つまみに最高のイカ料理、プラームックヤーン

俺が大人になったからなのか、それとも数十年前と比べて市場に出回るものがおいしくなったからなのか、イカの味に目覚めたのは実は最近だったりする。
しかし、イカってのはすごいといつも感心する。どこにでも存在しているではないか。イカを食べない国があるのかというほど、どこにでもある。どこにでも生息し、これだけ消費されてもなおいなくならない。
もちろんタイにもたくさんいるし、さまざまな料理で目につく。タイの海鮮と言えば、エビを思い浮かべる人が多いと思うが、供給量と値段の関係もあってイカの方がそこかしこで目に入ってくる。
今回はそんなイカでお勧めの料理を紹介したい。まだまだイカ初心者なので、これくらいしか知らないが、わが地元の首都バンコク東郊サムットプラカン県に来た際にはちょっと寄ってみてほしい店も一つ推しておきたい。
「ヤーン」と「ピン」の違いとは
タイに来たばかりのころも日本にいた時と同様に、イカに興味はなかった。街中で屋台のイカ焼き「プラームック・ヤーン」を見かけるが、日本のイカよりも異様に肉厚でおいしそうに見えなかった。
いまだにこの厚みのあるプラームック・ヤーンは好きではない
ちなみに、プラームックがイカという意味で、ヤーンはガイヤーンと同じ「焼く」という意味になる。ムックはイカスミのことだろう。プリンターやペンのインクもムックと呼ぶ。
ブタ串を「ムーピン」と言ったりするが、この場合、ピンは日本語だと「焼く」と訳されてしまう。厳密にはヤーン(あるいはヤーング)とピンは違う。タイ人でもちゃんと使い分けている人は少ないので、いろいろな人に聞いて総合してみると、ヤーンは英語で「ロースト」に当たるとみられる。焼き方はなんであれ、しっかり焼くというのがヤーンなのだ。
一方、ピンは炭火で「炙る」といったところか。日本の焼き鳥はガイヤーンというよりも、本来なら「ガイピン」の方がしっくりくる。ただ、ピンが付くのはムーピンばかりで、ほかにピンが付く料理はあまり見かけない。あるにはあるが、パッと思い浮かばない。だからこそ、タイ人もその違いをはっきりと理解している人がそんなに多くはないのかもしれない。
さて、1998年に初めてタイに来た時のこと。深夜着で、翌日はバンコク中心部シーロムからラマ4世通りを西へと向かい、カオサンまで歩いた。この時に中華街ヤワラーを通り抜けたのだが、ここで干しイカを水で戻して膨らんだものを何度も見かけた。
初訪タイの時、干して戻したイカを見て気持ち悪くなった
米粉麺のクイッティアオなら「イェンタフォー」によく入っている、一見メンマに見えるあれである。ものすごく暑い時期だったし、慣れないタイというのもあって、そのイカを見た時にむしろイカが嫌いになった。
クイッティアオなどに入る「ルークチン・プラー」は魚のすり身団子だが、弾力があるものはイカだったりする
さらに追い打ちをかけるように、その後、たこ焼きがバンコクで散見されるようになって嫌いになった。当時タイ人は今ほどタコを食べなかった。そもそもタコは消費量世界一が日本で、それ以外にタコを食べる国は多くないそうだ。タイ語でタコは「プラームック・ヤック」という。直訳では「鬼のイカ」と呼ぶ。
たこ焼き。商品写真の真ん中は絵こそタコになっているものの、タイ語はプラームックとしか書いていない
一般人からはイカの一種に数えられているくらいで、当時のたこ焼きにタコが入っているケースは少なく、カニカマやイカが代用されていた。イカのたこ焼きが案外にまずくて、それでなおのことイカが嫌いになってしまった。
最近はこのような小さいタコを辛いソースで食べる
プーパッポンガリーの代わりに食べてみたら……
そんなイカ嫌いだったが、ある日、転機が訪れた。知り合いに連れて行ってもらった、なんの変哲もない、タイ人向けの海鮮料理店だった。
日本人がタイの海鮮で食べるものといえば、生ガキ、グンパオ(エビの炭火焼き)あたりだが、忘れてはならないのがプー・パッポンガリー(カニのカレー炒め)だ。味はカニ肉の卵とじにカレー粉を少々といったもので、バリエーションはプーにある。「殻付きのまま」「カニ肉だけ」「ソフトシェル」が主要バージョンになる。
そんな海鮮料理店で、その人は「プーだったら、プラームックのカレー炒めの方がおいしいよ」と言った。イカ嫌いだったので思いつきもしなかったし、これまで食べたこともなかったが、考えてみれば合わない組み合わせでもない。確かにおいしかった。
味はもちろん、カレー粉の炒めものではあるが、イカの食感はカニ肉よりむしろ良かった。ノーマルのプー・パッポンガリーと何もかもが同じ。唯一、海鮮がイカというだけだ。それなのにこれまで固いとしか思ったことのないイカの肉が実に素晴らしいものに思えてきたのだ。
イカのパッポンガリー。プーよりおいしいと言う人も多い
その後、イカの料理に目覚め、主にスズキ目の魚バラマンディなどで食べる「プラー・ヌンマナーウ」をプラームックに置き換えたり、いろいろなものを試した。「ヌンマナーウ」とは酸っぱくて辛いスープで蒸し煮した料理である。一般的なレストランではプラーカポン(スズキ)などいろいろな魚で食べられるが、イカ版もある。姿煮のようで、安いのにぜいたく感があっていい。酒のつまみにもぴったりだった。
この「プラーカポン・ヌンシーイウ」をイカにしたバージョンや、酸っぱい白いスープにした「プラームック・ヌンマナーウ」もおいしい
タイではこの「カイ・プラームック」も人気。イカの卵らしいが、ビールに合う
回転しゃぶしゃぶ「オイシ」の寿司。最近はイカがラインアップから消えている
行き着く先はプラームックヤーン
そんなイカの料理を楽しんでいるうちにすっかりイカを克服し(元々食べられなかったのではないが)、食生活がさらに豊かになり、同時に分かってきたこともあった。それは、特別に手の込んだ料理よりは、シンプルなものがおいしいということだ。プラームック・ヤーンが一番であるということに気がついたのである。
中でもお勧めはサムットプラカン県のパクナムに、夕方から出てくるおじさんの店だ。パクナムは正確には、パーク=口、ナーム=水で、河口という意味になる。バンコクの隣にあるサムットプラカン県はチャオプラヤ川の河口にあり、パクナムは、県庁などがあるサムットプラカン県の中心地に当たる。
乾季に入ったばかりのパクナムはまだ水量が多い
ここに大きな駐車場があり、16時ごろになると、そのおじさんが郵便局やイミグレーション(出入国管理局)の近くに現れ、イカを売り始める。河口だけあって新鮮なイカなのか、とにかくおいしい。タレも辛いが美味。もしかしたら、イカそのものではなく、タレの方がおいしいのかもしれないが……。
開店前から客がやって来るサムットプラカンのイカ焼き屋台
改めて画像を見ると、他店よりイカが大きいような気がする
タイ人にも気に入られていて、割と早くからでき上がるのを待っている人がいる。ちょうど夕涼みにいい時間帯で、対岸はマングローブの林などがあるだけだから、夕陽もきれいだ。静かに行き交う船が夕陽に照らし出され、それを眺めながらイカ焼きを堪能する。なんという素晴らしい瞬間だろうか。ビールがあったら最高である。
今回はこのおじさんに会えず、過去の写真。2015年2月撮影
夕方のパクナム。渡し船が対岸に向かう
パクナムはまもなく高架鉄道(BTS)の駅が延伸されてオープンする。駅は完成していて、駅名の看板も付いたので2019年には開業するだろう。そうしたらパクナムはかなり行きやすい場所になる。そのため、開発も進んでいて、巨大な展望台もできる。楽しみで仕方がない。
パクナムに展望台ができているが、まだオープンしていないもよう
ちなみに、パクナム駅やさらにサムットプラカンの奥へと伸びるこのラインはBTSスクムビット線の延伸となるが、地下鉄を運営する「MRTA」のグリーンラインになる。パクナム駅を見ると、駅名の横にMRTAとあった。
パクナム最寄りの駅階段はここ。MRTAの看板が付いている
だが、管理、運営はどうなるのかと心配になる。というのは、BTSと地下鉄ではプリペイドカードが違うからだ。モーターウェイと首都高速道路をめぐっては、日本のETC(自動料金収受システム)のようなものがサービス開始当初は違っていたが、すぐに統合されて両方で使えるようになっている。
まさかパクナムに行くのにBTSのプリペイドカードが使えないとなったら面倒でしょうがない。単純に俺が地下鉄を使わないので、プリペイドを持っていないだけの話だが……。
パクナムで昭和風の祭りを発見
パクナムのイカ焼きの写真を当記事のために再撮影しようと向かったら、その日から2週間ほどお祭りになっていた。サムットプラカン県では毎年、お祭りが開催され、この時は県庁などの駐車場はもちろん、市街の道路も封鎖して縁日が並ぶ。今年は10月29日~11月9日。ちょうどこの記事が出る日の前日に終わっている。
出店する店も飲食店のほか、ゲームで景品をもらえる屋台、例えば射的やダーツなどが出てくる。これがおもしろい。昭和的な雰囲気がたっぷりで、日本の盆踊りに遊びに来たような気分になる。
ダーツのゲームは壁に刺さらなかったら勝ちというもので、これならとやってみたものの、どういうわけか針の先端が壁に向かってしまう。店員がやると刺さらないのだが、なんというか、だましのテクニックがすごい、いやセコい。
別の店ではコップをボールで倒したらぬいぐるみをくれるという。女性はどこまでも接近していいというのだが、これがなかなか倒れない。こんなのであっという間に120バーツ(約410円)が吹き飛んでしまった。
あまりの難易度に、仕掛けがあるのではないかと疑い弄り出す俺の家族ら
場所柄もあって、祭り会場にもイカ焼きはたくさんある。祭りによって例のおじさんはどこにいるのか分からなくなっていたので、仕方がなくほかにの店にした。色がやや黄色がかっている。なんだろうかと思えば、調味料に漬けているのだとか。全然おいしくなかった。
縁日で見つけたイカ焼き店。ただしょっぱいだけで最悪だった
残念ながら、あのおじさんに勝てるイカ焼きはいまだパクナムにはないようである。延線が開通したら、ぜひ試してほしい。
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