【タイの屋台飯と現実と俺が思うことと】第31回万能性が高くときどき無性に食べたくなる「カオパット」
スリウォン通りの「マンゴツリー」本店のパイナップル・チャーハン。さすがにこういった高級店では使い回しはないだろう。

各国料理は多種多様だが、これのない国があるのだろうかというもののひとつが「カオパット」、すなわちチャーハンだ。米を主食とする国には絶対にあるので、少なくともアジアでチャーハンがない国はないであろう。

アジアではチャーハンは中華料理のものようだし、ヨーロッパに目を向ければパエリアやピラフのように生米から炒めるものもある。そして、タイにもチャーハンは存在する。インドシナ3国――ベトナム、カンボジア、ラオスなどと比べてもタイのチャーハンはおいしいと俺は感じる。

ここではそんなタイのチャーハンを見ていきたい。

具材で変幻自在なタイのチャーハン

タイのチャーハンはそのまま「炒めたご飯」という意味の「カオパット」と呼ばれる。具材は自由自在でなんでも使っていい。メインとなるのは豚肉、鶏肉、エビ、カニあたりだろう。

タイ南部のゲストハウスで出されたシンプルな卵のカオパット。

タイ南部のゲストハウスで出されたシンプルな卵のカオパット。

タイ料理の名称は大きく分けて2種類あり、調理法や具材名を組み合わせたものと、固有の名称を持つものがある。後者は「パッタイ(タイ式焼きそば)」などがあり、カオパットは前者の方になる。
そのため、このカオパットのうしろに具材名称をつければ容易に注文できるというメリットもある。

スクムビット通りソイ31の奥にあるレストランで食べた、カオパット・プラートゥーは美味だった。

スクムビット通りソイ31の奥にあるレストランで食べた、カオパット・プラートゥーは美味だった。

カオパットには様々なバリーションがある。かつては前出のカオパット・グン(エビのチャーハン)など、具材のバリエーションが中心になっていた。
最近は「カオパット・プラートゥーケム(塩漬けのサバのチャーハン)」といった、これまでにあまり見なかった具材がちょっとおしゃれな飲食店で見られるようになってきている。

トマトが多くてやや赤いカオパットは珍しい。

トマトが多くてやや赤いカオパットは珍しい。

ほかには「カオパット・サッパロット」もある。直訳はパイナップルのチャーハンで、昔から多くの飲食店で扱っているメニューのひとつではある。
ただ、このカオパット・サッパロットは店によって大きく違う、注文が難しいメニューでもある。店によってはチャーハンにパイナップルを混ぜているだけの場合もある。これはピザのハワイアン的なものや、酢豚にパイナップルがインしているようなイメージだろうか。

ちょっと高級店に行くと、パイナップルの実をくり抜いたものを器にしている。こちらの方がよりパイナップル・チャーハンといった南国の印象を受ける。米にカレー粉が混ぜられて、ややドライカレー風の店も見かける。

しかし、注意してほしいのは、管理がずさんなレストランはそのパイナップルの器を使い回ししていることだ。色合いや風味からさすがにくり抜いたその日しか使わないが、ほかの客が手をつけたものを使っていることがあるのだ。

スリウォン通りの「マンゴツリー」本店のパイナップル・チャーハン。さすがにこういった高級店では使い回しはないだろう。

スリウォン通りの「マンゴツリー」本店のパイナップル・チャーハン。さすがにこういった高級店では使い回しはないだろう。

しかも生ものだから洗うことができない。子どもや腹を空かせた客がそのパイナップルから実をスプーンで取ろうとした痕跡がある場合もあった。

とにかく味つけにナンプラーを使えばカオパット

タイ料理がまだ日本でメジャーではなかったころ、米粉麺の「クイッティアオ」はベトナム料理と混同されて、フォーなどとも呼ばれていた時代もある。カオパットはインドネシアやマレーシアのナシゴレンと混同されていたこともあった。

そもそもチャーハンは呼び方からもわかるように中華料理がルーツといった印象がある。実際に日本でメジャーなのは中華料理のチャーハンだ。
タイ料理におけるチャーハンも中国のものと大きな違いはない。卵を入れて、タマネギなど、それから主要な肉や魚介類と白米を炒める。それから、タイではつけ合わせにキュウリやトマトの薄切り、ワケギ、ライムを添える。

ライムやワケギなどがつけ合わせになる。

ライムやワケギなどがつけ合わせになる。

カオパットは具材や調理方法によって色合いも変わるし、単純でありながら語り尽くせない個性もある。
でも、その中で重要なのは炭火で炒めるという点がカオパットの要素なのかなと俺は思う。中華はとにかく強火が命だ。炭火では間に合わないほどの火力が必要である。

カオパットを作っている場面ではないが、こういう炭火を使う調理シーンを覗くのが俺は好きだ。

カオパットを作っている場面ではないが、こういう炭火を使う調理シーンを覗くのが俺は好きだ。

その点、タイはいまだに大きなレストランでも炭火を使っていることが多い。カオパットには遠赤外線という原始的な要素も重要なのではないかと俺は思うのだ。

中華街ヤワラーのチャーハン。この色になるまできっちり炒めたカオパットもいい。

中華街ヤワラーのチャーハン。この色になるまできっちり炒めたカオパットもいい。

カオパットが中華料理と違う決定的な要素と言えばやはり「ナンプラー(魚醤)」の存在ではないだろうか。
まだ俺が日本に住んでいたころに自宅でチャーハンを作るときは塩の代わりにナンプラーを入れた。ただそれだけで『チャーハン』があっという間に『カオパット』に変わった。

カニ肉の入ったカオパット・プー。

カニ肉の入ったカオパット・プー。

カオパットは万能な料理だ。単品でも食事としてなんら問題ないし、白米のようにほかの料理と食べるときにも相性がいい。「トムヤムスープ」はもちろん、「パックブン・ファイデーン(空心菜炒め)」、「プーパッポンガリー(カニのカレー炒め)」などと食べてもいい。

パックブン・ファイデーンのように脂っこくて、汁気の多い料理はカオパットにぴったり。

パックブン・ファイデーンのように脂っこくて、汁気の多い料理はカオパットにぴったり。

やはりカオパットはタイ米を使うことでタイ料理にマッチする。油やスープの吸収性が高く、味がまとまりやすい。
先のようにナンプラーを使えば日本米のチャーハンでもタイ風にはなるが、やはり本物の味にはならない。炭火とタイ米とナンプラーがカオパットの要素なのだ。

ジャポニカ米のチャーハンも確かに捨てがたいが。

ジャポニカ米のチャーハンも確かに捨てがたいが。

タレにはプリック・ナンプラーを

それから、意外とタレ各種にも合う。
たとえば、シーフード料理店で「グン・パオ(エビの炭火焼き)」を注文すると必ず用意されるソースだ。タイ語では「ナムチム・タレー」と言い、まさにシーフード・ソースのことなのだが、トウガラシとニンニク、ナンプラー、それからライムを使う。これらは店によってレシピがまったく違うのだが、どういうわけか、カオパットにちょこっとつけても案外においしい。

このシーフードソースもカオパットに合う。

このシーフードソースもカオパットに合う。

だが、最もカオパットに合うタレは「プリック・ナンプラー」である。ナンプラーに生のトウガラシとニンニクなどを入れたシンプルなものだ。カオパットは単体では辛くないので、このプリック・ナンプラーで辛さと塩っ気を加えることができる。ナンプラーだけではただ塩辛い。
そこで暑さに疲れた胃腸を活性化させる意味でもトウガラシは有効だし、塩分補給にもナンプラーがいい。そんな要素が混じって、カオパットにはプリック・ナンプラーがぴったりなのだ。

先日、日本から出版関係者が訪タイし夜遊びに案内したのだが、最初のレストランでカオパットが忘れられてこなかった。そのあと、行く先々でカオパットを思い浮かべたものの、タイミング的に注文できる状態ではなく、その数日間は妙にカオパットが頭の中から離れなかった。
これで今、俺の中ではカオパット・フィーバーが始まっていて、それで今回のテーマをカオパットにしたという事情も実はあったりする。

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この記事の作者

高田胤臣
高田胤臣
1977年東京都出身。98年に初訪タイ後、2002年から在住のライター。移住当初は死体へのタッチに執念を燃やしていたが、現在は心霊ライターになるべく、恐怖スポット探しに躍起。タイ語会話と読み書きも一応可。
ウェブサイト:http://nature-neneam.boo.jp/
ツイッター:https://twitter.com/NatureNENEAM
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