長年タイ人と一緒に仕事をしていると、「きみらホント好きだねぇコレ……」みたいのがいくつか分かってきます。
まずは何と言っても、ビニール袋！
とにかく、僕の知っているタイ人は「ビニール袋がないと死んじゃうんじゃないの？」と思うほどビニール袋が大好きで、彼らにとってはマストアイテムなのです。

タイでは今でも、屋台の惣菜はビニール袋に入れて売られているし、田舎では、まだコーラなどのドリンクも、ビニール袋に氷と一緒に入れ、ストローを挿して売っている屋台もあります。昔、初めてタイに行った人はみな、「ビニール袋入りドリンク」にビビッたものでした。
タイ人コックさんたちが消費するビニール袋は、大小８種類くらいの大きさを使い分け、食材などを入れたり、とにかく何でもかんでもビニール袋を使いまくります。魚をさばく時などは、大きいゴミ袋で「魚のウロコ防護服」を、大掃除の時はタイ人全員で「油汚れ防護服」をそれぞれ作って装着します。その様はまるで「宇宙ステーション」の中で掃除をしているように見え、笑いをこらえるのが大変なのです。
タイのお菓子に関しては、ビニール袋を風船のように膨らませ、えびせんなどを割れないように入れたりと、とにかくビニール袋を器用に応用します。。
コックたちは、スーパーなどで使い放題の肉などが入ったパックを入れるのに使う薄手のロールビニール袋が大好物で、常に何枚かポケットに忍ばせています。ロッカー室に隠れてビニール袋を風船のように膨らませ、アルバイトがロッカーに入って来た時に、そのビニール袋をパンと破裂させて驚かせたり、ビニール袋を頭に被った上から巨大な茄子を口にくわえて突然登場し脅かしたり……と、小学生でもしないようなくだらない遊びを頻繁に仕掛けてくるのです。
それだけ使いまくると、必然的にビニール袋代もけっこうな金額になり、コストがかさむため、ある日、社長が「ビニール袋禁止令」をコックたちに通達し、タッパーなどの容器に変えさせた時がありました。

ビニール袋を奪われたコックたちは、すぐにイライラし始め、口汚く会社や店長らに文句を言って反抗した後、いかにビニール袋が素晴らしい物で、自分たちタイ人には必要不可欠な物なのかということを、僕たちに来る日も来る日もしつこく説き伏せるようになりました。
それでも僕らが「系列のインド人コックもシンガポール人コックもこんなに大量のビニール袋は使わないでやってんだ。お前らだってできるはずだろ。タイ人だけだぞ、無駄に大量のビニール袋を使っているのは！」と頑として受け入れなかったところ、なんとコックたちが自腹でビニール袋を購入し、使い出したのです。
とは言え、このまま自腹で買わせ続けるわけにもいかないので、ビニール袋の使用量を制限して使わせるか……と思っていた矢先、店の消耗品納入業者の担当のイトーさんが、ビニール袋をタイ人女性コックにコソコソと渡しているのを発見！　おいおい、なんですかそのビニール袋は？　と２人に問いただすと、タイ人コックは「イトーサン、ヤサシイ、アナタ、キーニャオ（タイ語でケチの意味）、バ～カ！」と吐き捨て立ち去りました。　イトーさんに事情を聞くと、ビニール袋禁止令を出した後、イトーさんが納品に来た際に、「イトーサン、コシイタイ？」と言ってニヤニヤしながら強引にマッサージをされた後、「オイシイタイリョウリ、ドウゾ」とお弁当の残りを渡され、受け取った手を握りながら猫なで声で、「ビニールフクロ、タダデオネガイシマス」とせがまれ、なんか怖くなってしまい、断りきれず毎回タダでコッソリ渡してました、すいません……と白状しました。
あいつらが自腹で買うなんておかしいなぁ……と思っていたらやっぱり、タイ人女性陣が業者にタカッていたと言うオチで、タイ人のたくましさをまざまざと痛感しました。

まとめ

ビニール袋好きは、タイ人でも地方出身者の40代くらいの人々の話で、最近の若者世代にはこの手の「ビニール袋の使い手」はあまりいないのではないかと思います。皆さんも、「何かを包みたいなぁ……」なんて思った時には、タイ人にビニール袋と輪ゴムを差し出せば、サクッと何でも包んでもらえることでしょう