ＳＭの“Ｓ”を指す“サド（サディズム）”という言葉。
これがフランスの作家、マルキ・ド・サドの名前に由来しているのは有名な話ですよね。アナルセックスがきっかけで11年も獄中生活を送り、バイオレンスなエロ小説を書いて捕まって、精神病院にも入れられた、フランス革命期のエロ偉人です。

現在では考えられないことですが、当時のフランスはフェチな性癖が罪に問われた時代。
セックスは子供を授かるための神聖な行為で、快楽を得るためのプレイなんてとんでもない！……みたいな風潮だったとか。
まあ、裏でアレやコレやと色々ヤッていたのは間違いないのですが、そのプレイ内容を大っぴらにすることはありませんでした。

しかしサドは自分の性癖をフルオープン！
自身の思想を貫き、欲望に正直に生きて、結果、生涯の半分を刑務所と精神病院で過ごすことになったのです。

それではさっそくサドの人生を追ってみましょう。

サドは由緒正しい貴族の出。
士官学校に入って軍に従事していましたが、駐屯先でしょっちゅう女の子を追い回し、結婚してからも酒や女遊びをやめられない放蕩息子だったようです。
そして1763年、23歳のときに『別宅に娼婦たちを連れ込んで乱行に耽った』という理由で、15日間収監されました。記録が残る中での最初の逮捕歴です。
というかこれ、複数プレイで逮捕された……てこと？　なんて時代だ！

これで反省するはずもなく、また別宅を借りて女遊びを再開。
この頃に長男が生まれていますが、パパはオペラ座の女優をナンパして遊びまくっていました。
で、この別宅に“ローズ・ケレル”という浮浪者の女性を連れ込み、鞭打ちプレイに興じました。しかしこれ、合意の上でのプレイでは無かったようです。

ローズの訴えで明るみになったこの出来事は“アルクイユ事件”として大騒ぎに。何せ「フェチプレイなんてとんでもない！」という時代。サドは７ヶ月拘禁され、前代未聞の犯罪者というレッテルを貼られました。

それでもやめないマルキ・ド・サド。

今度は下男と一緒にマルセイユの売春宿へ。
４人の女性に媚薬入りの飴を食べさせ、今度は自分も鞭で打たれ、下男ともヤリあって、アナルセックスも楽しんで……。
これらすべてが罪となり、なんと死刑判決が下ったのです。
というかこれ、乱交パーティで死刑……てこと？　なんて時代だ！

サドだって死罪はさすがに受け入れられません。
そこで夫人の妹とイタリアに逃亡。数年後に捕まって、また逃亡。そしてラ・コスト城に３年半ほど引きこもっていた（でも乱行は続けていた）ところを再々逮捕され、死罪は免れたものの、11年の獄中生活を余儀なくされます。
サドの作品の多くは、このときに執筆されたものです。

サドは1790年に革命によって自由の身となりますが、じつはその前年に精神病院に移送されています。理由は収容されていたバスティーユ牢獄の窓から「ここの囚人は虐待されている！」「民衆は決起せよ！」などとわめき散らし、危険人物とされたから。
革命の始まりとされる“バスティーユ襲撃”が起きたのは、それからわずか10日後。そのため、サドが革命のきっかけを作ったとも云われています。

出所したあとも、執筆活動を続けたサド。

作者を死んだことにしたり、版元をオランダにしたり、役人の目をごまかしながら過激描写てんこ盛りの作品を刊行（ちなみにこの時期、政治活動が原因で何度か逮捕されています）。

しかし1801年、著作『新ジュスティーヌ』と『ジュリエット物語あるいは悪徳の栄え』がナポレオンの目に留まり、「このいかがわしい本の作者を見つけ出せ！」という命令により逮捕。
罪状は『風紀紊乱（ふうきびんらん）罪』。
風紀やモラルを乱した罪ってことでしょうか。革命が起きてもフェチ解禁とはいかなかったようです。

サドは裁判無しで投獄され、いくつかの牢獄を経たのち、シャラントン精神病院に移送。
74歳で没するまで幽閉されました。

「わたしドＳだし～」「俺、踏んづけられたい！」と、お互いの性癖を暴露し合う。
そんな、今では日常会話レベルのエロトークも、時代が違えば犯罪者扱い……。
サドは生まれるのが早すぎましたね。

本日のエロ偉人
名前：マルキ・ド・サド（1740年～1814年）
性別：男
国籍：フランス
日課：ＳＭプレイ

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（文：喜助）